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第8話

「……なら、魔法を使わせてくれ。自分で治す」 「そうしてやりたいが却下だ。生憎まだ信用してないんでな」  そう言ってしばし考えたあと、彼は閃いたように言う。 「そうだ、そのまま回復魔法を使ってみたらどうだ? 自分に返ってくるんだろう?」 「……衝撃は返ってくるが、それで傷ができないのと同じように、治ることもない。それどころか回復魔法は魔力を使うから衝撃が凄かった」 「なるほど、試したのか」 「捕まった時のことも想定して一通りは……」  あまりにも自然に話し掛けてくるものだから、つい会話を続けてしまったが、敵に話すことではないと思い直し口を閉ざす。  ルイもそんな話にはさほど興味はないのか、リアムから取り上げた服や武器、携帯用魔術書などを検分して木箱に収め直している。 「これはなんだ?」  そう言って目の前に(かざ)されたのはアンティークゴールドのロケットペンダントだ。中には発情を一時的に抑える特効薬が入っている。 「……返せ。母さんの形見だ」 「お前の母親は亡くなっていたのか」 「そんなの、知らない」 「? 知らないとはどういうことだ」 「もうずっと会ってない。今後も会うことはない」  ぶっきらぼうにそう告げれば、ルイはペンダントを無遠慮に開けた。だが、中に入っている薬を見て訝しげに眉根を寄せる。 「そうか。だが、持ち物は一旦預からせてもらう。問題ない物は明日返すが、それ以外に関しては必要に応じて渡す」  ルイは全てを箱に収め、それを出入り口付近に置くとベッドの端──リアムの上体に接する位置に座った。軋んだ音と振動に、俯せで転がっていたリアムは少しだけ壁側に体を引く。  まだ出て行かないのか、とうんざりしつつ、リアムからも気になったことを訊ねた。 「しばらくここに住むのか?」 「……どういう意味だ」 「この辺りはあそこから近いから、一時的な休息場所として選んだのかと思ったんだが」 「ああ、……移動する予定はない。宮廷からもそう遠くないし、国境付近の警備はうちが担当しているからな。一部の者はここよりさらに北西に連れて行かれると思うが」  ある程度予想はしていたのだが、仲間全員でここにいられるわけではないと知り、リアムは奥歯を噛みしめる。これでますます逃げづらくなった。  だが、少数の方が隙をついて抜け出しやすいのではないか、そんなことを思って、基地内の設備や通ってきた場所の見取り図を思い浮かべる。  

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