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第13話
そのまま捨てられたとしても、共に過ごすことになったとしても地獄なのだから、番になった相手を殺して番の解消を試みる者もいるだろう。故に、普通の感覚の人間なら、番にしようなどと恐ろしいことは絶対に考えない。
そんなのは嬲り殺すのが好きな酔狂な人間のすることだ。
「いくら捕まったからって番になるわけないだろ! それともこの国はそんな酷いことが許されるのか!?」
「──はあ。少し静かにしろ」
ルイはこれ見よがしにため息をついて眉を顰めた後、靴を脱いでさらに体を密着させてくる。
「近づくな! ほ、他にもっと奴隷として有意義な使い方があるだろ」
自分自身を奴隷と呼ぶことに抵抗があったが、それも抱かれることや番になることに比べれば些末なことだ。
「十分有意義だと思うが? 何もこれだけがお前の役目じゃない。さっきも言ったが、魔法の使い手としてもちゃんと働いてもらう」
軽い押し問答の末、説得は無駄だとわかり、体での抵抗を強める。
じたばたと手で押し、足で蹴飛ばし、枕を叩きつけて後ずさる。敵地で、こんな狭い部屋の中で、魔法を封じられた状態で。逃げられるとは思っていないが、すんなり受け入れられるほど物分かりは良くない。
あわよくば、可愛げのない姿に幻滅して、このまま萎えてくれればいい。手軽に処理できる奴隷という立ち位置から、手間のかかる面倒な奴隷という立場に格下げされれば万々歳だ。
魔法使いとしては働くつもりでいるけれど、そちらの世話をしてやるつもりはない。
「離せ!」
だが、ルイはじっとこちらを見つめた後、おもむろに口を開く。
「────お前が背負っていた友人。あれは体が弱そうだな」
唐突な話の切り出しに不穏な気配を感じ取り、リアムは眉間にシワを寄せる。
「……だから、なんだ」
「酷使したらすぐに倒れそうだ。仕事にはあまり使えなさそうだから、皆の新しいおもちゃになるか、いや顔が綺麗だから高く売れるか」
「何が言いたい!」
語気を強めれば、ルイは眉を上げて言う。
「分かるだろう? 取引してやると言ってるんだ」
(取引……?)
「…………抱かせてやる、と言えばラファエルを助けるとでも?」
「ああ。解放してやることはできないが、アンドレ中佐につけてやろう。アンドレは優しいからきっと大事にしてくれる。中佐のものになれば他も手出しできなくなるだろう」
ルイの提案にリアムは眉間のシワをさらに深めて、強く睨み付ける。
「…………卑怯だ」
「嫌なら放っておけばいい。それに。取引せずとも今ここで無理やり抱くこともできる」
そう言って、硬いベッドに押し倒される。自分よりも大きく、基礎体力も勝る相手に力では敵うはずもなく、手首を押さえつけられて身動きすらできなくなった。とっさに魔法を使おうとしたが、バングルが目に入って舌打ちする。
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