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第19話

「そうだな……これを外して新しい首輪を受け入れるなら、始めの二つは叶えてやってもいい。他の者の解放は俺の一存ではできないが、彼らも悪いようにはしないと誓おう」  真摯な声音に振り向けば、ルイの真っ直ぐな眼差しに射抜かれて息を呑む。  彼の表情から今の言葉に偽りがないことが分かってしまい、予想外の展開にリアムの方がたじろいでしまう。 「なん、だよ。卑怯な取引持ち出すくらい、し……したかったんじゃなかったのか?」 「ああ。だが、それよりも大事なことだ。先刻気付いたがお前の首輪は粗末すぎる」  そう言って再び顔を寄せると耳廓(じかく)を甘噛みして、強引に意識をルイへと向けさせる。 「お前をそばに置けるなら────他の誰の番にもならないなら、触れられなくても構わない。お前の気が変わるまでいくらでも待ってやる」  吐息がかかる距離で囁かれて、嫌悪からか快楽からかぞくりと皮膚が粟立つ。 (まるで、プロポーズみたいだ)  いや、そんなわけはないと、もう一度身震いした。 「……必死だな」 「自分の物を他のアルファに取られるのは許せないからな」 「──お前のモノになった覚えはない」 「お前の主人だと言ったのをもう忘れたのか。随分と物覚えが悪いな」  ルイの言うことは信用できないが、ここまでして自分の番にしたいのなら、自死されると困るというのもあながち嘘ではないのだろう。  だからと言って、自身を守る盾を自ら捨てる気にはならないが。 「ほら、早くしろ」  しかし、これ程までに自分に執着するのは一体何故なのだろう。 「ロックは……魔法が使えないと、解除できない」 「なるほど? やはり壊すしかないか」 「っ……やめろ」 「声が震えてるぞ。さっきまでの威勢はどうした?」  いくら丈夫にできているとは言え、本気で壊そうと思えばできないこともない。そもそもリアムの護身具は、理性を失ったアルファとの事故を防ぐ為の物であって、意図的に壊す事は想定されていないのだ。 「っ……やめて、くれ」  敵地で、武器などは全て没収された今、唯一自分を守ってくれる物が取り上げられるのはさすがに我慢ならない。  ルイもそこまで拒絶されるとは思っていなかったのだろう。リアムの青ざめた顔を見て、少しばかり困惑した様子で、柔らかな薄桃色の髪に触れる。 「そうか……お前は来たばかりだから、怯えて警戒するのも無理はないな」  まるで猫でも拾ってきたかのような言い草に、リアムは眉を顰める。 「仕方ない。今日のところは正直に答えれば許してやる」 「答えるって、何を……?」 「恋人は? 相手はアルファか?」  先ほどと同じ質問だ。わざわざ聞くと言うことは余程気にかかっているらしい。  

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