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第23話

 慌てて引き抜こうとすれば、ルイに肩を押さえつけられる。 「動くな。避妊具が裂ける」 「っ……!」  そう言われれば大人しくする他ない。今もなお止まらない熱い飛沫を直接受け止めるわけにはいかないのだから。 「ヒート、なのか?」 「そうとも言えるし、違うとも言える」 「どっちなんだ!」 「お前のフェロモンは濃いからな。ヒートではないが、それに近い状態だ。なに、理性は飛んでないから安心しろ」  ルイの言葉にリアムは眉を顰める。 「……理性があったらこんなことしないだろ」  心の声がぽつりと漏れて、今度はルイが眉を顰めた。 「本当に生意気だ。感じやすいところは可愛かったのにな」 「黙れ」  頬がかあっと熱くなる。それを誤魔化すようにそっぽを向いて、ルイの陰茎が凶器でなくなるのをじっと待つ。  いっそのこと気絶してしまいたい。だが、肉体的にも精神的にもそこまで弱くはないようで、それは叶わなかった。 「本当は初めてだったのだろう? 挑発なんかしなければ優しくしてやったものを」 「いや……初めてじゃないぞ。先生に訓練されたからな」  半分嘘だ。養成所の講師に悪戯されたのは事実だが、最後まではしていない。だが、こいつに初めてをあげたと思われたくない。 「捕まればそんな事もあるから、慣れておかないと反撃のチャンスを逃す、と……訓練と称して不埒な事する変態野郎だと思っていたが本当だったな」  吐き捨てるように言えば、ルイは目を細めてこちらをじっと見る。 「──話が違うな」 「何がだ?」 「養成所はお前を保護し、手は着けない約束だった」 「…………どういうことだ?」  突然ルイの口から出た自分の故郷にリアムは動揺して、声が震える。 「養成所と俺たちは裏で繋がっている。それくらいは察してるだろう? 金を渡してルーティアからオメガを買っている。養成所はそのために作られた小屋だ。オメガを集めるためのな」 「なっ……」  ある程度予想はしていた。が、このタイミングでまさかルイの方からその話が出ると思わなかった。  それに養成所そのものがそういう組織なのはリアムの予想の域を遙かに越えていた。 「無論毎回こちらに連れてきたんじゃ信用も無くなるから、正式にルーティアの軍に所属する者や特性を生かして普通に就職する者も多いが」 「っ……」  そして、実際に国に売られたのだと判るとショックだった。まだ、どこかで諦め切れてなかったからだ。きっと助けがくる、あの時は他の兵も罠に掛かっていたのだ、と。  そして今もまだ諦め切れていなかった。 「うそだ……」

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