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第25話
(──知りたくなかった)
国に売られたという事実はまだしも、養成所自体がそんな組織だったなんて。今まで積み上げてきたものが全て仕組まれたことだったなんて、知りたくなかった。
体の内側が燃えるような狂おしい程の快感も。知りたくなかった、全部。
「……用が済んだならとっとと出てってくれ」
足元から崩れ落ちていくような心許なさに体を丸め、布団をぎゅうっと引き寄せて殻に閉じこもる。
「嫌われたものだな。シャワーを浴びたくなったら監視の人間に言え」
そう言って、衣服を整える衣擦れの音が響いたのち、扉が開き出て行く音がした。バタンと扉の閉まる音を聞いて数秒、もそもそと布団から顔を出す。
信じられない思いと同じくらい、ルイの言ったことに偽りがないというのは分かっていた。
いったい今までの人生はなんだったのだろう。
養成所の誘いを受けたのは、周囲に迷惑ばかりかけていた有り余った魔力を役立てて、いつの日か母に親孝行をするためではなかったのか。それが、なんだ。この有り様は。
養成所に入る時、母は凄く反対していた。そのせいで入所後は手紙などのやりとりさえもしていなかったが、自分が一人前になって母を守れるくらい強くなったら再び一緒に暮らすはずだった。
国を守るため、その軍に入るため、必死に訓練してきたのに、その国に裏切られた。挙げ句、ただのΩとして為す術も無く蹂躙された。なんだか可笑しくて、乾いた笑い声を零せば、いっそうやるせない気持ちになった。
「そういえば、薬……」
ふと薬を服用していないことに気付く。今までは毎日服用するタイプの避妊も兼ねた抑制剤を使っていたが、こちらに連れてこられてから没収されてしまったので一度も服用していない。
「くそ……!」
抑制剤を飲まなくなったら数日で発情期がくるだろう。だいたい三日前後……ということはそろそろきてもおかしくない。
先ほど散々身体を開かれたせいか、熱っぽくだるい。既に前兆があることに焦りつつ、それを紛らわそうと布団をぎゅうっと握り締めた。
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