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第34話
だが、彼らが嫌味を言うのも無理はない。リアムはまだ来たばかりなのだ。そんな奴に上から指図されるのは気に食わないのだろう。
けれど、それは少数派で大半の者は岩の大きさにざわめいた。ぱっと見で民家一軒分はある。
これだけの大きさの岩が転がり落ちてきて、建造物を破壊しても尚ほとんど崩れていないということは、壊すにしても運ぶにしても大きな力が必要だろう。
現に縄を使って運ぼうとした形跡がある。だが、ここにあるということは失敗したのだろう。
被害を広げず砕くには強力なバリアを張る必要があるし、粉砕しきれるとも限らない。分解したり溶かすにも魔力と時間がかかりそうだ。
「……わかった。この辺一帯の住民は?」
「既に避難、救助済みだ」
「なら……短時間で粉砕すれば被害が広がりそうだし、このままその台車に乗せようと思う」
「いいだろう」
「ちょっと待ってください! こんな大きな岩、どうやって乗せるんです?」
ルイがリアムの提案に頷くと、先ほど嫌味を言っていた水色の髪をした男が止める。それもそうだ。今ここで持ち上げられるのは恐らくリアム一人だけだろう。
魔法で簡単に持ち上げられると思われがちだが、重ければそれ相応の魔力を消費するし、体積が大きければバランスよく魔法をかけるのは難しい。
その辺のオメガなら危なげなく持ち上げられるのは小石や茶碗程度のもので、頑張ってもほんの一瞬馬を浮かせられるかどうかだ。
ここにいる者たちは訓練されているから、馬や人も浮かせることができるだろうが、それでもこの大きさは無理だろう。
小さな子供が大男を担ぎ上げるのと同じくらいの無理難題である。
皆で協力すればできるかもしれないが、他国の魔術師のクセを知らないのにいきなり一緒にやるのは危険だろう。
「俺が持ち上げて、ルーティア人に運ぶのを手伝ってもらう。ヴェルターニの魔法使いには万が一に備えて周囲にバリアを二重に張ってもらうのと、下ろすときの衝撃を抑えるため台車にもバリアを張ってもらいたい。……梃子 を使ってもいいけど、それを用意する手間と時間を考えたらこれが一番だと思う」
「は……ひとりで持ち上げるわけ? そんなの無理に──」
「今はリアムに指揮を任せている。指示に従え」
ルイの一喝で男は黙る。その顔は青ざめていて、命令に背けばきつい罰を与えられるのだろうということは、容易に想像できた。
「良い判断ですね。頭は回るようだ。しかし、本当にそれほどの力が?」
近くにいたローレニア軍の魔術師が呟くとルイもそれに頷く。オメガにしては体格がいい男だ。
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