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第26話 ※
布団に入った青明がもぞもぞと動いた。師の様子を看に行くと言って聞かなかったが、部屋を塞ぐと大人しく布団に入っていったが、眠れないらしかった。視界を部分的に塞ぐ黒い霞は夜に溶けている。耳の奥の騒めきはまだ安定せず小さくあったが、それでも青年の落ち着かない物音は十分に聞こえる。
「ふ、…ぅッ、ん…」
くぐもった細い声が布団と枕の間から漏れている。
「ぁ…っ、」
息遣いに頬や背筋を撫ぜられているような感じがあった。手で触れられるより輪郭に沿っている。青年の金髪がさらさらと翻った。黒い靄に邪魔された視界の中で彼と目が合った。安住は腰を上げて布団に乗った。
「お前、な…に…」
護手淫の修行中に聞こえた息だった。背後から彼に添い、前に手を伸ばす。熱く硬い膨らみを包んだ。
「やッぁ、ぉ前、手…怪我してっ…!ぁっあ、」
布と素肌の間に手を入れる。それでも生命尊の力の弱まった身体では触覚も衰え、人間の肌との隔たりがあった。しかし彼のそこは熱く、爛れた指に染み込んでいく。
「護手淫じゃな…っ、ぁんっ」
背を丸め、尻が安住の下半身へ押し付ける。腕の中で青明は強張り、包帯巻かれた手を外そうとしたが躊躇っていた。握り込んで、見様見真似で扱く。
「あ、ずみ…ぁあ、護手淫、途中っだ…たからあっ、ぁ…」
くちくちと音がした。彼の肩に顔を埋める。鼻奥が求めた匂いで満ち溢れた。授けられた言葉が出てしまう。
「待っ、あず、みぃ…んぁっ、下着汚れる、から…っ、ぁぁっ待って、んん…ッ」
振り向きかけた青明の唇が濡れている。吸い付きそうになった。茉箸に誑 かされた言葉はもう舌の上にある気がした。
「ぁ、下着…汚れっ…あ、ずみ、…あずみぃ!」
白い粘液が出るのだ。安住は手を止めた。腕と胸の中で青明は肩を上下させている。少し汗ばんでいるようで、彼の優しい香りが蒸れている。
「抜いてくる…」
掠れた声でそう告げ、青明は布団を出ようとした。安住は首を振って布団へ戻す。
「安住…お前、今日変…」
眉を下げ、彼は安住に従う。しかし数秒だった。寝間着の下へ安住は手を掛け、治まりのつかない茎に頭を突っ込んだ。
「ちょ、安住っ…」
喉奥まで彼の器官を咥え、茉箸に唆された言葉を押し戻す。鼻腔まで青明が薫っていく。
「あ、ず、み…」
髪を掴まれたがあまりにも弱く、撫でて梳かれているようで、熱芯に舌を絡めた。祭礼酒しか知らなかった味蕾に青明を覚える。
「あぁ…っん、出る…安住、口…放せっ、」
放せなかった。味の濃い先端部を舌の裏で刺激した。
「ぁんんっ」
びくびくと青明の身体が跳ね、口内で彼の肉茎が爆ぜた。護手淫の修行とは同じもので、違っていた。夜に彼が師にしているように弾けた後もまだ舐め摩る。
「安住…?」
蕩けた声と共に手が頬に降ってきた。厚手の布を間に挟んだような鈍い感覚だったが、それでも青明の体温は心地良かった。
「飲んだの、か…?」
頷く。頬にあった手が耳まで動き、視界を邪魔する黒い靄の間に青明が大きく映り込む。額に一点、微熱が触れた。彼が夜、この営みを終えた直後に師からされているものだった。安住は青明の薄く開いている濡れた唇に見惚れた。
「ごめんな」
眉を下げ、円を切ろうとした手を止めた。首を振る。これは護手淫の修行ではない。耳の奥の騒めきが大きくなる。彼の声はしっかりと記憶している。
「お前もここで寝ろよ」
穏やかな体温が慎重に爛れた指を辿り、包帯に巻かれた手を包む。布団を被せられ、彼は枕を半分空けた。
「また明日な。生命尊様にきちんと伝える。あの人と一緒にいたい…」
くるりと向いて、喉が隆起した。
「もちろん、お前とも、さ」
まだ繋がっている指が熱くなる。茉箸に預けられた言葉が逆流し、祭礼酒でしか潤わない喉をさらに渇かしていく
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