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第4話
カッチの家に入ってすぐ遭遇した真由ちゃんの可愛さに、ぶっちゃけ俺はマジでビビってしまった。
カッチと違っていい感じに日に焼けた肌。
カッチと違って子猫みたいなデッカイ目。
カッチと違って眼鏡なし。
要するに、全然似てねぇ。
でも好みのタイプじゃねぇとかそんなん関係なくて、なんかもう可愛さの次元が違うっつーか……俺の目を上目遣いで見詰めてくる真由ちゃん、マジ可愛い……。
細くて顔ちっちゃくて、肩に下ろした長い髪なんかツヤツヤのサラッサラで、人形みたいだ。
こりゃみんなのアイドルにもなるわ。
つか、なんでそんなに見詰めてくるの……?
もしかして、俺に一目惚れしたとか?
「72点」
突然真由ちゃんが無感情に言い放ってきた。
靴を脱ごうとした時いきなり目の前に立ちはだかられて、そのまま俺は20秒くらい見詰められてたんだ。
この、どう見ても小学校高学年くらいの女の子に。
「72点か。まあまあだな」
いつの間にか真由ちゃんの隣で腕組みしてたカッチが、俺の顔を見ながら軽く呟いた。
そのあと、
「僕は120点だったよな?真由子」
俺の隣にいたムッチが体を屈めて真由ちゃんの顔を覗き込むと、
「帰れっ、ヒゲッ」
……真由ちゃん容赦ねぇー。
マジで嫌われてんだな、ムッチ……。
つか、
「72点とか120点とか、なんの点数?」
俺も体を屈めて真由ちゃんと目の高さを合わせて、俺的に最高に優しい笑顔と声で聞いてみたら、
「顔」
返ってきたぶっきらぼうな一言に、俺の笑顔は引き攣った。
可愛いけど愛想ねぇなぁ、この子……。
「ほらほら真由子ぉー、そんな怖い顔してっとマサヤ君に嫌われちゃうぞぉー」
苦笑いのムッチが真由ちゃんの頭に手を置いた……瞬間、真由ちゃんがその手を払い退けた。
「触んなヒゲッ、キモイッ」
真由ちゃんはそう言い放って、くるっと回れ右したかと思ったらそのまま家の奥に走ってく。
「……めっちゃ嫌われてんな、ムッチ」
思わずムッチに目をやって呟くと、
「まあねぇ」
ムッチは真由ちゃんが走ってったほうを見詰めて小さく笑って、
「だから慰めてっ」
「抱き着くなってばっ」
「ビー君、ソレほっといていいから上がってよ」
いきなり横からしがみついてきたムッチを笑いながら押し退けて、俺はカッチに言われた通り靴を脱いで家に上がった。
「お邪魔しまーす」
「……マサヤンも加藤兄妹もヒデェよ……。どうせ僕は嫌われモンだよ……」
ムッチは目頭を押さえて俯いたけど、俺とカッチはそれをスルーしてムッチに背を向ける。
「ビー君、俺の部屋こっち」
「うん。真由ちゃん可愛いね。何年生?」
「小3」
「え!?」
小3って8歳か9歳だよな?
見えねぇっ。
「俺、5年生くらいかと思ったよ」
カッチのあとに続いて階段を上りながら正直に言ってみると、カッチはちょっと俺を振り返って微笑んで、すぐに正面に顔を戻す。
「アイツ平均よりデカイからねぇ。それもあってたまにお子様向けファッション誌のモデルとかやってんの」
「スゲェじゃん、それ」
「たまにだよ、たまに。なのにアイツ、一流のモデル気取りでさ。生意気でやんなるよ、ホント」
「可愛いんだからいいじゃん。いいなぁ、俺も真由ちゃんみたいな妹欲しかったなぁ」
「おい!マジで放置プレイすんなよ!泣いちゃうぞ!」
俺とカッチは追い掛けてきた小さい生き物に背後から飛び付かれて、危うく階段でコケそうになった。
真由ちゃんは確かに可愛いけど小学3年生だ。
どう考えてもグラがずっと片想いしてた女の子じゃない。
マジで真由ちゃんだったらグラってロリコン…………つか、俺のクラスメイト達はほぼ全員ロリコンか……!
いや、アイツ等は俺の前の学校の女子も狙ってた。
守備範囲広過ぎだろ、ちょっと……。
「ビー君、別にサッカ達ロリコンな訳じゃないからね」
部屋に入るなりデスクチェアに座ったカッチが、床に腰を下ろした俺に向かって唐突に言ってきた。
なんだ。
そうなんだ。
……………………ん?
「カッチって超能力者!?俺の心読んだ!?」
「あははっ。違う違う。アイツ等の話聞いて真由子が小学生だとは普通思わねぇだろ?」
カッチは腿に肘を置いて、膝の間で手を組んだ格好で身を乗り出してくる。
「最近小さい女の子狙った犯罪増えてるし、真由子は世間に顔も晒してるから余計危ねぇって、アイツ等なんかっつーとわざとああやって騒いでくれてんの。学校ん中にもマジでアレな奴とかいるからさ、これだけの男が真由子の周りにいるんだぞってアピールしてくれてるっつーか。お陰でウチの学校のアレな奴等が真由子に近付いたことは今んとこない」
「そうだったんだ……」
いい奴等だな、みんな。
俺、転校してよかったかも。
前の学校にも友達はいたけど、なんつーか……一番気の合った奴は男じゃなくて元カノで、男とは学校生活に困らない程度の、ある意味スゲェドライな付き合いしかしてなかったからなぁ……。
ぶっちゃけ合わなかったんだと思う。女子の目ばっか気にしてる、前の学校の男とは。
だから俺はしつこいくらい元カノのことを引きずってたのかもしんない。
カッチやムッチ、それからサッカやヤマチー達となら楽しくやってけそうだし、元カノのことも忘れて新たな恋も始められそうだ。
まだ相手いねぇけどさ。
「でもさカッチ、真由子ってあの歳で男の好みうるせぇじゃん?アレな奴等に騙されてついてくってことはなさそうだよな」
ベッドの上で胡座かいてたムッチが笑いながら言った。
男の好み……初対面の俺に点数つけるくらいだもんな……。
そういやサッカは真由ちゃんに気に入られてんだっけ。
ってことは……、
「真由ちゃんの好みってさ、もしかしてアイドル系?」
とりあえずカッチに聞いてみたら、カッチはちょっとビックリしたような顔をして手を叩いた。
「当たり当たり。よくわかったな、ビー君」
「だってほら、サッカが真由ちゃんに『好き』って言われたっつってたし」
「あー、なるほどねぇ。実は真由子、スゲェアイドルオタクでさ、アイドル目当てでモデルの仕事始めたんだよ。アイツの部屋、アイドルのポスター貼りまくりでぶっちゃけ怖ェんだ」
顔をしかめて笑うカッチに釣られて、俺もついつい苦笑いしてしまう。
「じゃあさ、真由ちゃんがグラ見たら大喜びなんじゃない?」
「ああ、めちゃくちゃ喜んだ。去年まだ入学して間もない頃、グラを隠し撮りしてSNSに上げた馬鹿がいてさ。さらにそれを真由子に見せた馬鹿がいて。それ以来ほとんど毎日連れてこい連れてこいってうるせぇの」
「へぇー」
女の子がグラの顔見たらそうなるだろうなぁ……。
しかも入学して間もない頃っつったら噂の美少女時代だろ?
「その写真、ちょっと見てみてぇかも……」
うっかり口に出してた俺に、
「隠し撮りはグラがアカウントごと消させたから同じもんは見せらんないけど、俺が普通に撮ったやつならあるよ。見る?」
カッチはあっさり聞いてきた。
で、
「ビー君にならいいよな?見せても」
なんでかニヤニヤしながらムッチに尋ねるカッチ。
今まで妙に無口になってたムッチは、話を振られるなり目を泳がせて「……うん、まあ……」と曖昧で弱々しい返事をした。
グラの写真なのに、なんでムッチがキョドってんだ?
カッチもなんでそんな悪人笑いなんだよ。
スゲェ気になる。
早く写真見てぇっ。
カッチはデスクチェアを半回転させて、机の上のタブレットを手に取った。
机はスチールっぽい素材の黒いシンプルな平机なんだけど、椅子も合わせてスゲェオシャレだ。
俺の、小学校の入学祝いに買ってもらってから愛用してる学習机とは違い過ぎる。
カッチの机、昔流行ったアニメのシールとか貼ってねぇしな。
つか、部屋全体がモノトーンでまとまってて、なんかドラマに出てきそうな感じだ。
オシャレメガネは部屋までオシャレ。
しかも妹が超可愛いなんてズリィよ、カッチ。
「お、これだこれだ」
今までタブレットの画面に視線を落として写真を探してくれてたカッチが、顔を上げてタブレットを差し出してくる。
「はい、これ。グラ以外のが多いけど、左にスワイプすればいろいろ見れるよ」
「ああ、ありがと」
礼を言って受け取って、俺はワクワクしながら画面を見た。
「うわー」
思わずそんな声が出て、顔もニヤける。
そこには俺の知らない、今よりちょっとだけガキ臭ェ、クラスのみんながいた。
でも知らねぇ顔のが多いのは、クラス替えで今のクラスとはメンバーが違うせいだろう。
「ははっ、みんな中坊みてぇ。これヤマチーだ」
「ヤマチー、1年の時違うクラスだったんだけどさ、撮られるの好きらしくていろんなとこに出没してるよ」
デスクチェアごと俺の前まで移動してきたカッチが笑顔でタブレットを覗き込んでくる。
カッチが言った通り、至るところにヤマチーがいて、気付いたら俺は写真を見ながらヤマチー探しをしてた。
「あ、こんなとこにもヤマチー。こっちにもいる。あははっ、なんだこれっ、変顔大会?スゲェ顔してんな、カッチッ」
「横にいんのサッカ」
「ウッソ、マジで!?」
あのアイドル顔が変形しまくってて誰だかわかんねぇっ。
あー、笑い過ぎて涙出てきたっ。
またヤマチーいるしっ。
……あれ?
ヤマチーばっか探してたのとサッカの変顔のせいで気付かなかったけど、ムッチいなくねぇか?
右にスワイプして写真を遡って、今度はムッチを探した。
やっぱいねぇ。
カッチとよく一緒に写ってんのはムッチじゃなくて、全く知らねぇ奴だ。
ムッチとカッチって1年の時は違うクラスだったのか。
つか、このカッチと一緒に写ってる奴、やたら可愛い顔してんな。
ちょっと丸顔なんだけど鼻筋通ってて、目なんか落ちそうなくらいデカイ。
でも女っぽい訳でもなくて、ちゃんと男の顔してる。
少女漫画に出てくる男ってこんな感じか?
とにかく、女に「カワイイーッ」とか言われてモテそうな顔だ。
「ビー君、グラの写真は最後」
そうカッチに言われて、本来の目的を思い出した。
俺はなんでかカッチと一緒に写ってる奴が気になってソイツの写真を探してたんだけど、カッチには俺がグラの写真探してるように見えたんだろうな。
すいません、探してませんでした。
俺は慌てて写真をサムネ表示に切り替えて、最後のサムネをタップした。
「……うお……っ」
ビビリ過ぎて一瞬頭ん中真っ白んなった。
マジで。
だって、スンゲェ美少女がスンゲェ美少年と微笑み合ってんだ。
美少女のほうは芸能人でもなかなかいねぇだろってくらい可愛い、ってか綺麗で、髪はショートなんだけどまさにお姫様。
でも顔のパーツはグラだ。
ちゃんと同一人物だってわかる。
だからこの美少女が実は男だってのもすぐわかるんだけど、グラのこと知らない人が見たらこれが男だとは思わねぇだろうな……。
で、美少年のほうは、アイツだ。カッチと一緒に写ってた奴。
表情で受ける印象ってこんなに変わるもんなんだな。
ほかの写真では単に可愛い顔した男だけど、この写真だとえらい綺麗な少年だ。
つか俺、この美少女なグラ見たことあるかも……。
前の学校にいた時、教室で女子達がスマホ片手に騒いでたことがあった。
SNSで回ってきたらしい写真の学ランの美少女が男なのか女なのか、最終的には男子も巻き込んでクラス中の話題になったんだ。
それがさっきカッチが言ってた「SNSに上げられたグラの隠し撮り」だったんだろうな。
他校の俺達まで見てたってことは、めちゃくちゃ拡散されてたんじゃん……。
因みに、その時「この美少女が男でも余裕で抱ける」とか言ってた男多数。
……俺もその1人だ。
グラ、ごめん。
つか、グラ1人でも大騒ぎになったんだ。
もし隠し撮りじゃないこの写真が拡散されてたら、女子達はなんとしてでもグラともう1人の美少年がいる学校を探し出しそうとしたんじゃねぇかな。
「どうした?ビー君。あまりの衝撃で時間止まっちゃった?」
聞かれて顔を上げたら、ニヤニヤした悪人笑いのカッチと目が合って、そのまま俺はじっとカッチの目を見詰めた。
「カッチ、グラと一緒に写ってんの、何組の奴?」
「……それ僕です……っ」
カッチの代わりに妙にくぐもった声が答えた。
声がしたほうを振り返ったら、ベッドの上で俯せになって枕で頭を隠してるムッチがいた。
俺はカッチに視線を戻した。
「で、グラと一緒に写ってんのは誰なの?カッチ」
「ビー君、信じたくねぇのはわかるけど、それマジでムー」
半笑いのカッチに笑い返して、俺はカッチの肩を片手で数回叩く。
「カッチー、そんなネタいらねぇってー。で、これ誰?」
「いや、だから武藤修作、当時15歳」
笑いを消した真顔できっぱり答えてくるカッチを見て、これは嘘ついてる顔じゃねぇと思った瞬間、俺の脳味噌は石になった。
ちょっとずつ解れてきた脳味噌がなんとか言葉を捻り出す。
「……マジっすか?」
「マジっすよ」
またしてもきっぱり答えられて、俺は一瞬タブレットの画面に目を落としてカッチの顔を凝視した。
「整形!?」
「してません!」
いきなり背後で上がったムッチの怒鳴り声に、俺はちょっとビクッとしながら振り返った。
だけど、目が合うなりまたムッチは枕を後頭部に乗っけて顔を隠してしまう。
俺はタブレットを床に置いて、座ったままベッドの方に体をずらした。
そして、ムッチが両端を握って頭に押さ付けてる枕を片手で引っ張った。
……コイツ、抵抗してやがる。
「なんだよムッチッ。なんで顔隠すんだよっ」
俺も意地になってきて、なんとしてでも枕を取ってやろうと両手で枕を引っ張ってみたけど、ムッチの抵抗は半端なくて結局俺が諦めた。
力勝負すんのはな。
背は俺のがデカイけど、力はムッチのほうが上みたいだし。
力で勝てねぇなら頭を使う。
「あんな可愛い顔から悪人面に整形するって、ムッチ変わってんね」
「……可愛いって言うな……っ」
ムッチは枕の下から文句を言ってきた。
さっき『整形』って言葉に反応したからいけると思ったんだけどな……。
俺の頭脳作戦、以上終了。
その時、
「何照れてんだよ、ムー。もう見せちゃったんだから諦めろよ」
ちょっと呆れてるような感じでカッチがムッチに声を掛けた。
が、ムッチは枕で頭を隠したまま返事もしない。
それを見て、カッチが溜め息をつく。
「全く、何恥ずかしがってんだか。久し振りに顔の事言われて照れ臭さ倍増しか?」
そんなふうにカッチにからかわれても、ムッチは無反応のままだった。
こりゃマジで照れてんだろうか。
「ビー君」
呼ばれて振り返ると、デスクチェアの背凭れに背中を預けて足を組んでたカッチが、苦笑いで話し始めた。
「ムーもグラと同じなんだよ。自分の顔にコンプレックス持っててさ、それで髭生やして前髪上げてんの。髭と前髪だけだけど劇的ビフォーアフターでしょ?」
「……人相も違うように見えるよ、加藤さん……。つか、まるっきり別人だよ……」
「まぁ、精神面にも変化あったらしいからね。でもそれで周りは変に騒がなくなったけど、ムーの髭面見て真由子がマジ泣きしてさ」
真由ちゃんがマジ泣き……それを聞いて、ある言葉が脳裏を過ぎった。
「120点……」
思わず呟いたら、カッチが苦笑を濃くする。
「そう、それ。ムーは真由子の理想の王子様だったんだよ」
「120点ってマジだったんだ……」
「うん。真由子さ、裏切られたとかやっぱり本物のアイドルのほうがいいとか言って。その頃ちょうどモデル事務所にスカウトされてたこともあって、ほとんどヤケクソでモデルになったんだ」
「じゃあ、真由ちゃんがムッチを嫌ってるのって……」
「髭のせい」
俺はもう一回ムッチに顔を向けた。
枕を取り上げようとしてもまた抵抗されるだけだろうから、枕の真横に頭を倒して、
「ムッチー」
近くから呼んでみた。
数秒後、枕とベッドの間に隙間が出来て、ちらっとムッチが顔を覗かせる。
ちょっと丸顔で、鼻筋通ってて目がデカイ。
よく見たら、1年前の写真とあんま顔は変わってない。
全っ然気が付かなかったけど、ムッチってスゲェ美少年じゃん。
髭がなければ。
俺は間近からムッチの顔を眺めながら口を開いた。
「YOU、髭剃っちゃいなヨ」
「絶対ェやだ」
「なんで?髭なければ真由ちゃんの機嫌も直んだろ?」
「真由子には悪ィことしたなぁって思ってっけど……マサヤン、写真見たろ?僕、顔がガキ臭ェから髭ねぇとナメられんだよ」
ガキ臭ェって……。
本人はただの童顔だと思ってんのか。
まあ、自分の顔が他人にどう思われてるかなんてわかんねぇもんな。
「けど女にはモテんじゃねぇの?髭ねぇほうが」
「カワイイーとか言われて馬鹿にされるだけだ」
「いやそれ馬鹿にしてんじゃねぇと……」
「僕、女にカワイイとか言われんの、スゲェムカツクんだよ。どういうつもりで言ってようが、僕には馬鹿にしてるようにしか聞こえねぇ」
それだけ言って、ムッチはパタッと枕を下ろしてまた顔を隠した。
前の学校で女子にカワイイとか言われてた連中は、そう言われることを素直に喜んでた。
だから俺も女子が男に言う『カワイイ』は褒め言葉なんだと思ってたし、女ってなんかっつーとカワイイを連発するからそんなに気にしたこともなかったんだけど、ムッチにとっては違ったみたいだ。
俺は女にカワイイなんて言われたことねぇから、ぶっちゃけムッチの気持ちはよくわかんねぇ。
贅沢な悩みだとも思う。
でもコンプレックスになるって相当だよな。
ムッチがそうなんだから、男に女扱いされてたグラはムッチ以上に悩んだに違いない。
外見どころか声も悩みの種になって喉潰すくらいだもんな……。
ああ、そっか。グラの前髪が長ェのは顔隠すためか。
ムッチとグラは似たような悩みを持った、ある意味仲間だったのかもな。
あの写真の2人を思い出すと、もしかしたらムッチはカッチよりグラと、グラはクリケンよりムッチと仲がよかったのかもしんねぇな、とも思ったりもする。
今じゃそんな関係見る影もねぇけど。
つか、1年前までスゲェ仲よさそうに笑い合ってた奴相手に喧嘩吹っ掛けるって、そう簡単に出来ることじゃねぇよな。
グラが好きな女の子ってマジでどんな子なんだろ。
カッチは多分知ってんだろうな。
聞いてみるか?
いや、俺には関係ねぇ話だし、わざわざ聞くこともねぇか。
この先ムッチとカッチと付き合ってけば自然とわかるかもしんねぇし。
「そういやビー君、ムーといる時グラに会ったんだよね?」
唐突に、カッチが話を振ってきた。
今朝のことはマックにいた時話してる。
俺は体ごとカッチに向き直って頷いた。
「うん。どうしたの?いきなり」
「あー、いやさ、写真見てわかったと思うけど1年の時は仲よかったんだよ、ムーとグラ」
カッチはさっき俺が床に置いたタブレットをデスクチェアに座ったまま拾い上げて、足を組みながら画面を見つめる。
なんでか全く俺のほうを見ない。
それを不思議に思ってたら、
「グラがムーに突っ掛かるようになった原因、実は俺なんだよね」
画面に視線を落としたまま、カッチは独り言を言うみたいに呟いた。
……原因?
グラがムッチに突っ掛かるようになったのって、ムッチがグラの好きな子取ったからだろ?
でもそれはグラの勘違いで、ムッチはその子のこと友達としか思ってなくて……って言ってたよな、ムッチは。
これのどこにカッチが入るんだよ。
入るとこねぇだろ。
原因なんつったら、カッチがグラの片想いの相手みたいじゃねぇか。
流石にそりゃ………………あれ?
ムッチは友達としか思ってねぇんだよな?
……あれ?
「なんだ。知ってたのかよ、カッチ」
いつの間にか枕の上に頭を乗っけてたムッチがそう言うと、
「ああ、まあね」
カッチはタブレットの画面を見つめたまま顔も上げずに答える。
そんな2人を交互に見て、俺はどうしたらいいのかわかんなくなった。
なんつーか、微妙に居心地悪ィ。
つか、グラがずっと好きだった相手ってのはカッチだったんだ……って、キモイと思うどころか妙に納得しちゃってんのはなんでだ?
1年前の、どう見ても女の子なグラの写真を見たあとだから、グラが男を好きでもいいんじゃねぇかなって思ってんのかな、俺。
けど、グラがカッチをねぇ……。
…………うわー、今一瞬スゲェもん想像し掛けたわ……。
俺は美少女みたいなグラの写真を見て「これなら男でもオッケーだ」とは思ったけど、カッチとグラの絡みを想像しそうになったら、やっぱなんか違うなぁって……。
いくら顔が女っぽくても男だもんな、グラは。
そうだよ、グラは男なんだ。
ヤるってなって、上か下かってなったら上だろ、普通。
グラって顔のわりにデカイし、カッチが下………………ちょっと待てよ俺。
なんでそれは有りなんだよ!
落ち着け。
眼鏡だ。
これは眼鏡マジックだ。
全部眼鏡のせいなんだ。
って俺眼鏡好き過ぎだろ!
眼鏡なら男でもいいのか!
しっかりしろ、俺!
「で、お前どうすんだよ」
え!?
いきなり来たムッチの問い掛けに焦ってムッチを振り返ったら、ムッチは寝っ転がったまま片手で頬杖ついてカッチを見てた。
……だよな。
一瞬俺に聞いてんのかと思ってビビっちゃったよ……。
「どうって……。どうにも出来ねぇよ、俺には。だから今まで知らねぇ振りしてきたんだし」
顔を上げて答えたカッチは、眉を寄せた完全な困り顔だった。
そりゃな、グラが女だったらなんも問題はねぇけど、普通この状況で「じゃあ付き合っちゃおっかな」なんて簡単には言えねぇわな。
「つか、いつから気が付いてた?」
「去年からだよ。グラって思ってること結構顔に出んだろ?それでなんとなくっつーか……」
ムッチにガン見されながら聞かれて、カッチはモロに困ってる感じで目を逸らした。
1年前のグラでもダメだったってことは、カッチって確実に女としか付き合えねぇってことじゃん。
………………なんでちょっとガッカリしてんだよ、俺。
俺だって女しか好きになったことねぇし、カッチが女としか付き合えねぇことにガッカリするとかマジでありえねぇんだけど。
冗談抜きで俺、細くて白くて眼鏡掛けてる奴なら男でもいいのか?
それとも、カッチ限定……?
いや、違う。
急に男好きになったりする訳ねぇだろ。
カッチのことは好きだけど、そりゃ勿論変な意味でなく、友達として好きなんだ。
カッチだけじゃなくて俺はムッチのことも好きだし、サッカやヤマチー達のことも好きだ。
今まで心底気の合いそうな男に会ったことなかったから、ちょっと浮かれてるだけなんだ。絶対そうだ。
でももし付き合うってなったら、何気に可愛い顔してるムッチより、女顔のグラより、カッチ……って、あくまで『もしも』の話だ。
大体、実際カッチとヤりてぇ訳じゃねぇし。
いくら好みのタイプに近いったって、カッチあからさまに男だしな。
やっぱりオッパイはあった方がいいです。
「けど、ムー」
囁くようなカッチの声に、思わずドキッとした。
いきなりだったからだ。
それとカッチが無駄にいい声だからだ。
ほかに理由はない。
ある訳がない。
「お前こそどうすんだ?このまま放置プレイし続けんのかよ。見ててさ、なんか流石にグラが可哀相になってきたっつーか……。ダメならダメで、はっきり言ってやったほうがいいんじゃねぇかな」
「おいおい、なんで僕が言うんだよ。言うなら自分で言えって」
えらく真剣な顔になったカッチに向かって、ムッチが苦笑いする。
俺も苦笑いだ。
そんなことムッチに言わせてどうすんだよ、カッチ。
人づてなんて中学生の女の子じゃあるまいし、それこそグラが可哀相だ。
「ムー、お前なんか勘違いしてねぇか?」
唐突に、カッチが首を傾げる。
「え?勘違い?」
苦笑いのままのムッチに聞き返されて、カッチは溜め息混じりに口を開いた。
「グラが好きなのはお前。で、グラはお前が俺としょっちゅう一緒にいるようになったのが気に入らねぇの」
……はい?
「違うだろ、カッチ」
俺が言うより早く、ムッチが言った。
けど、
「グラはお前のことが好きで……」
「だからそれが勘違いだっつーの」
言い終わる前にカッチに言い返される。
しかもスゲェきっぱりと。
「見ろよ、これ」
カッチは突き付けるように、例の写真をムッチに見せる。
「1年の時からグラはずっと仏頂面だ。お前にしかこんな顔しねぇの。気が付かなかったか?」
……そういやさっき、グラは思ったことが結構顔に出るっつってたっけ、カッチ。
写真のグラはこれ以上ないってくらい綺麗な笑顔だ。
こりゃもう決定的だな。
ムッチに視線を向けてみたら、ムッチは元からデカイ目をもっとデッカくして固まってた。
「どうすんの?ムッチ」
声を掛けたら、目をかっぴらいたまま俺に顔を向けてくる。
瞬きしろよ。
怖ェよ、ちょっと。
「グラなら、ヤれねぇこともない。……かな」
「付き合うんだ?」
「つか、グラのこと嫌いじゃねぇし、アイツがそうしたいっつーなら」
やっと瞬きしたムッチに、俺は大袈裟に溜め息をついてやった。
「カラダだけですか……」
「僕にも好みがあんだよ」
あっさり言ってくれんなぁ。
「だったらわざわざ男にまで手ェ出すなよ」
「ちょっと男にも興味あるし、ヤらせてくれんならヤっとかなきゃでしょ?勿体ねぇじゃん」
そりゃそうかもしんねぇけど、相手グラだぞ?
下手に手ェ出したらボッコボコにされんじゃねぇか?
しかもそこに《元・姫のSP》のクリケンが加わったら間違いなく殺されんぞ……。
「ムー、よく考えてみろ。グラも男だ、ヤられんのお前」
「イヤァーッ!」
カッチに淡々とツッコミを入れられて、ムッチは裏声で悲鳴を上げながら体を俯せに倒して枕の下に頭を隠した。
「まあさ、ヤるヤらねぇはひとまず置いといて、これからどうすっかちゃんと考えろよ」
そう言って、カッチはまた頭を隠したムッチを見たまま腕を組んで、デスクチェアの背凭れに凭れる。
「でもわかんねぇよなぁ、グラも。なんでよりにもよってコレだったんだろうな」
「さりげにコレとか言ってんな!」
喚きながら"コレ"が枕を跳ね退けて上半身を起こした。
コレ……じゃなくてムッチは確かにいい奴だと思うけど、恋愛対象として好きってのはやっぱピンとこねぇな。
マジでグラはムッチのどこがツボで…………あれ?
「どうした?ビー君。難しい顔して」
不意にカッチに声を掛けられて、俺は首を傾げたままカッチの顔を見た。
「あ、いやさ、グラがムッチのこと好きなんはわかったんだけど、ホントに恋愛対象として好きなんかな。実際グラがどう思ってんのかはわかんねぇんでしょ?」
今まですんなり聞いちゃってたけど、よくよく考えてみれば全部カッチの勘だ。
大体、恋愛絡みで男が男好きになるなんてそう滅多にあることじゃねぇしな。
それが普通に恋バナになってたってことは、カッチとムッチにとって男同士の恋愛は身近なもんなのか?
野郎しかいねぇ学校に1年も通ってると身近になったりもすんのかな……。
……てか、全然身近じゃねぇのにすんなり聞いちゃってた俺はどうすれば……。
なんて本気で悩み始めたところに、
「やっぱちょっと遅いよね、ビー君って」
笑顔のカッチにサラッと言われて、俺はマジでブルーになった。
カッチは別に俺をヘコませたくてあんなことを言った訳じゃない。
それはわかってる。
なのに俺は完璧にヘコんだ。
あの程度の言葉、普段なら笑って済ませんのに……。
やっぱ俺、カッチのこと好きなんかな……。
違うって、だから。
とにかくだ、ここで落ち込んでたらカッチも変に思うよな。
笑っとけ、俺。
「なんだよ、カッチ。それどういう意味?」
「いや、普通の奴ならもっと早くツッコミ入れてんだろうなって思って」
「俺めっちゃ普通だよ!?」
「あー……自覚ない奴こそホンモノなんだよなぁ……」
カッチは俺から目を逸らして、小さく笑って呟いた。
つかホンモノって何?
聞き返そうと思ったら、俺に視線を戻したカッチの方が俺より先に話し出した。
「去年のことなんだけど、グラの奴男に告られるたびにヒデェ振り方しまくっててさ、つい『男がダメでももうちょっとくらい相手のこと考えてやれ』ってグラに言っちゃったんだよね。そしたら『相手による。男がダメな訳じゃない』って。それでムーにだけあの笑顔だろ?もう好きっつってるようなもんじゃない」
「なるほどねぇ……」
カッチ、グラが男も平気なこと知ってたのか。
…………平気なんだな。
じゃあヤるってなったら……。
思わずムッチを見たら、目が合うなり枕で顔をガードされた。
言うなってことか。
しょうがねぇ、言わないでおいてやろう。
つか、さっきのカッチの話で気になったことがひとつあるんだよな。
とりあえずそれ聞いとくか。
「カッチ、ヒデェ振り方ってどんなん?なんかしたの?グラ」
「ああまあ……」
カッチは前髪を掻き上げて苦笑いして、俺の顔を見ながら膝の上で指を組む。
「簡単に言えば、ボコボコ」
「……え?告られただけで相手ボコボコ?」
そりゃ確かにヒデェな……。
流石ヤンキーっつーか、グラならやりそうっつーか……。
「単に告られただけならそこまでしねぇよ、アイツも」
ちょっと怒ってるような声でムッチが話に入ってきた。
告白以外のことされてボコボコ……って、何されたんだよ、一体……。
「グラは口悪ィけどマジでキレたりしねぇんだよ。基本脅すだけでガチで殴ったりもしねぇし。あれで結構理性的なんだよな、アイツ。そんな奴がマジギレしたんだ。相手のほうが悪ィ」
そう言ったムッチは顔も声も不機嫌そうだった。
ムッチ、グラのこと普通に好きなんだな。
これじゃ簡単に振ったりも出来ねぇか。
つか……俺、グラがムッチやクリケンに突っ掛かってんの見て「マジギレしてる」って思ってたんだけど……アレ、マジギレじゃなかったのか。
じゃあガチでキレたらどうなるんだよアイツ……。
「だよな」
一言呟いたカッチが天井を見上げて話し始める。
「グラの外見だけ見て暴走した奴が悪ィよな。グラも、グラにボコボコにされた奴等も、流石にその辺のことは黙ってっから、未だにクリケンがやったことになってるらしいけど」
カッチとムッチが"その辺"の事情を知ってるってことは、去年まではマジでグラと仲よかったんだな。
じゃあ、サッカとヤマチーが言ってた《姫とSP》ってのは事情を知らねぇ奴等が勝手に言ったことで、本当のグラは姫どころかSPも必要なかったと。
それじゃ女扱いされんのも、SPに守られてるって思われんのも嫌に決まってるよな。
なんかカッケェな、グラ。
女にカワイイとか言われて喜んでる連中が情けなく思えてきたぞ。
けど、クリケンがやったってことになるくらいグラが男をボコボコにするって、あの顔からはちょっと想像出来ねぇなぁ……。
「グラってそんな強ェんだ?」
カッチに聞いてみたら、
「小6だったか中1まで空手やってたらしいからね。強ェと思うよ」
……空手やってたのかよ、グラ。
そりゃ素人は勝てねぇよな。
ってことは…………ムッチ、どう頑張ったってヤられる側確定じゃん…。
「ムッチ……もう諦めてグラにヤられちゃいなさい」
無意識に、俺の口からは力なく言い聞かせるような声が出た。
ムッチはと言うと、
「無理。それは無理」
顔を引き攣らせてプルプル首を横に振る。
「無理ったって、力じゃ絶対ェ勝てねぇだろ?それとも潔く振る?」
「振って、友達に戻れんなら…」
目を伏せたムッチの声は今までよりちょっとだけ低かった。
きっと、真剣に考えて出した答えなんだろうな。
「戻れんじゃねぇかな」
ふと、静かにカッチが言う。
「いきなりお前が俺とばっかいるようになってグラも混乱してるだけだと思うし。つか、なんで急にグラから離れたんだよ、お前」
そうだ、ムッチとグラの関係がややこしくなった大元の原因は間違いなくそれだ。
それさえなきゃグラもムッチに喧嘩吹っ掛けるようになったりもしなかったろうし、普通に友達関係は続いてたよな、多分。
空中から言葉を探すみたいに目を泳がせてたムッチは、ひとつ溜め息をついてカッチを見た。
「いや……アイツ、クリケンと仲いいだろ?アイツとクリケン付き合いも長ェし、なんか入り込めねぇとこあってさ。そんで自然とお前といる時間のが長くなってって、気が付いたらアイツの機嫌悪くなってっし、ああこりゃアレかなと……」
「アイツが俺のこと好きなんじゃねぇかって?」
「ああ、まあ……そういうことになんのかな」
ムッチが曖昧に答えると、今度はカッチが溜め息をつく。
「馬鹿だろ、お前。知ってたけど」
「そんなん僕だって知ってるよ」
ふて腐れたようにムッチは口を尖らせた。
付き合いの長ェ奴等の間には入り込めねぇなんかがあるってのはわかるな。
今まさにそんな感じだし。
でも不思議と居心地は悪くない。
話聞いてるだけで面白ェと思う。
カッチとムッチ、グラとクリケン、何が違うんだ?
考えてみりゃ、カッチとムッチは最初からかなりウェルカム態勢だったけど、グラとクリケンは間に誰も入らねぇようにしてるっつーか入る隙もねぇって感じだったな。
つか、あの2人の間になんか怖くて入れるかっつーの。
ムッチだって怖がってたくらいだしな。
カッチとムッチ、グラとクリケンの違い。
考えるほどでもねぇ。単に人当たりがいいか悪ィかってだけの話だ。
特にクリケンはあんま人と関わんの好きじゃなさそうだし。
その孤高の男っぽいとこがまたカッケェんだよなぁ、クリケン。
もう完璧一匹狼。
……じゃねぇのか、グラがいっから。
けど、グラとクリケンの関係って《友達》っつーのとはなんか違うような気がすんだよな。
なんて言やいいんだろ、ああいう奴等のこと。
「確かにアイツ等の間には入れねぇよな。リアル青春アミーゴだし、アイツ等」
「え?何アミーゴ?」
突然カッチが笑いながら言った言葉がよく聞き取れなくて、思わず聞き返した。
「青春アミーゴ。昔流行った歌だよ。『地元じゃ負け知らず』って歌詞が出てくる」
「それ!アイツ等マジで地元じゃ負け知らず!前付き合ってた女がアイツ等と地元一緒でさ、超有名人とか言ってた!」
ムッチがいきなり割って入ってきて大爆笑し始めた。
地元じゃ負け知らずで超有名人って……何そのハイパーヤンキー……。
「カラオケ行こうぜカラオケ!『地元じゃ負け知らず』歌いに行こうぜ!」
「ムー、それタイトルじゃねぇし!」
大笑いしながら、カッチとムッチが立ち上がった。
……カラオケ!?
「行くぞマサヤン!」
「近くにあっから行こうよ!ビー君!」
おいおい、いきなりカラオケモードスイッチオンしてんじゃねぇよ…。
「いや、俺カラオケは……」
「あ、ちょっと着替えさせて!」
「今まで着てたんだからいいじゃねぇかよ、そのまんまで!」
俺を置き去りにして笑いっぱなしで言い合うカッチとムッチ。
で、ムッチを無視してカッチが制服を脱ぎ出した。
学ランをベッドの上に放り投げて、ワイシャツのボタンを外しに掛かる。
男が服脱いでるだけだ。
なのに、心臓がバクバクいいだした。
…………ヤベェ、俺マジだ。
もう言い訳出来ねぇだろ、これは……。
でもカッチとヤりたい訳じゃねぇ……ってのも、自信なくなってきた。
ああもう、ぶっちゃけカッチとならヤれそうだ俺!
つか……、
「……いい身体してんだね、カッチ」
エロイ意味でなく。
「え?ホント?マジ嬉しいっ」
半裸で喜ぶカッチに、俺は目が釘付けだった。
エロイ意味でなく。
「俺、趣味筋トレなんだよね、実は」
ああ、だからそんなマッチョ……。
……これってもしかして…………もしカッチと付き合えても、俺がヤられる側?
今日から筋トレやるか……。
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