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童話パロ『白雪姫』(2)

 お城の庭で小鳥達と戯れる白雪姫を発見した尾藤は、白雪姫のあまりの美しさに目を奪われ、 「……うわー……」  なんともテンションの低い声を口から垂れ流しました。 「何そのトンデモネェモン見ちゃったって顔は」  尾藤の態度に白雪姫は少々ご立腹気味です。  白雪姫は足元にまとわり付くドレスの裾を乱暴に掴み上げ、《姫》にあるまじき大股で尾藤の前までやって来ると、腰に両手をあてて胸を張りました。 「さあ、とくとご覧なさい!世界が羨むこの美しさを!」  堂々と言い放たれ、尾藤は思わず吹き出してしまいました。 「ヤベェカッチ!面白過ぎる!」 「わかってる!それは自分が一番よくわかってる!」  某ネズミープリンセス風白雪姫のコスプレをした加藤利臣(カトウ・トシオミ)は完全にヤケになっていました。 「ビー君、白雪姫役はグラかミズキちゃんだと思ってたろ。残念だったな!白雪姫ってのはな、雪のように白い肌と黒檀のような黒髪を持つ姫!つまり俺だ!どうだこの驚きの白さ!因みにファンデーションは使ってません!」  尾藤の眼前に顔を突き出し、加藤は息もつかずにまくし立てます。  加藤の格好には大笑いした尾藤でしたが、互いの鼻頭が触れそうなほど顔を寄せられたことには狼狽して赤面し、上半身をのけ反らせて目を逸らしました。  尾藤は加藤に友達以上の想いを抱いているので、間近で見詰められると照れてしまうのです。  しかし尾藤の気持ちに気付いていない加藤は、なおも顔を寄せて尾藤に詰め寄ります。 「あまりの美しさに直視出来ませんか!いやんもうトシオミ困っちゃう!美しいって罪ね!ね!」  勢いよく冗談を並べていても加藤の顔は1mmも笑っていません。  完全にヤケクソです。  尾藤はまた顔を背けましたが、加藤は懲りずにそれを追います。 「ビー君!キモイのはわかるけどさ!そんなあからさまに拒否られると……!」 「いや、キモイんじゃなくて……っ」 「ちょっぴり快感」 「えぇ!?」  加藤の陶酔し切ったような声に意表を衝かれ、尾藤は反射的に振り返ってしまいました。  焦点を定められないほど近くにあった加藤の笑顔に尾藤の心臓は危うく止まり掛けましたが、加藤は追い打ちを掛けるように、 「あんまり逃げるとチューしちゃうゾ☆」  にっこり笑って言いました。  少々サドっ気のある加藤にとっては嫌がらせ以外の何ものでもない言葉でも、尾藤にとっては嬉しい言葉です。  尾藤は加藤の両肩を掴み、 「しちゃって下さい!!」  茹で上がった顔で叫びました。  心の中で。  実際は掴んだ加藤の肩を力いっぱい押し返し、赤くなった顔を隠すようにして俯きました。  いっそ自分からしてしまうという選択肢もなきにしもあらずですが、尾藤は今まで築き上げてきた加藤との関係を壊したくないのです。  それ以前に、自分からやっちまえる根性など尾藤にはありません。  焦りと羞恥と期待が一緒くたになり、尾藤は混乱して加藤を押し退けましたが、咄嗟に押し退けつつ頭を下げた尾藤の行動を「ごめんなさい!勘弁して下さい!」という意思表示と取ってしまった加藤は、 「そこまで嫌がらるとマジでチューしてやりたくなるな」  サド心を擽られていました。 「ち、違うってっ。嫌がってんじゃなくてっ」  加藤の不敵な笑みを見てしまった尾藤は、赤い顔を引き攣らせて後ずさりしました。  じりじりと距離を縮めようとする加藤に、そうはさせまいと後ずさりを続ける尾藤。  どちらともなく中腰に構えて息を詰め、カバディでも始めそうな体勢で妙な緊張感まで漂い始めたその時。 「はじめてーのーチュウー!君とチュウー!」  突然加藤がオペラ歌手ばりの素晴らしい声量と声で歌い出したのです。  中腰のまま無表情で朗々と歌う女装した加藤、そのなんとも言えない不気味さに、 「イヤアァーッ!!」  尾藤は耐え切れずに甲高い悲鳴を上げて逃げ出しました。  いくら恋心を抱いている相手でも、白雪姫のコスプレをした180cmの細マッチョにそんなことをされて、尾藤も流石に恐怖を感じたようです。  しかも全速力で追い掛けて来られ、恐ろしさ倍増です。  こうして猟師は白雪姫に追われ、お城の外の森まで逃げて行きました。 「はじめてーのーチュウー!」 「ギヤアァーッ!カッチ怖ェーッ!!」

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