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童話パロ『白雪姫』(5)

「武藤修作!ただ今家より帰還いたしました!」  俺から離れるなりそう言って、ムッチは近くで爆笑してた3人組に突進してった。  そして抱きつく、抱きつく、抱きつく。  ギャーギャー言いながら笑い続ける3人組とムッチ。 「……『家より帰還』ってなんだそりゃ」 「今のムーのホームは学校なんだろ」  完全に独り言のつもりだったから、カッチの声にちょっとビビってしまった。  カッチに向き直ると、カッチは3人組とはしゃぐムッチを苦笑いで眺めてた。 「あんなに学校来んの面倒臭がってた奴が、今じゃ普通に朝から登校して、みんなと一緒に下校してんだもんなぁ……。ビー君のお陰だ」 「え?」  俺?  そういえば、俺が転校してきてからムッチはちゃんと学校来るようになったって前にも言ってたな、カッチ……。  俺のお陰かぁ……。  俺もムッチのお陰でスゲェ早くクラスに馴染めた。  サンキューヒゲ。 「でも、なんか変なんだよな」  苦笑いだったカッチが不意にちょっと眉を寄せた。 「変って何が?」  聞いてみると、 「確かに『尾藤ワールドのふしぎ発見するためにミステリーハンターになる』みたいなことは言ってたんだけど……」 「はっ?そんなこと言ってたのっ?あのヒゲッ」 「ああ、まあ。あとは、あれだけ女取っ替え引っ替えして家に連れ込んでたのに、それも急にやめてる」 「俺が来てから?」 「そう」  カッチはムッチを眺めたまま言葉を返してくる。  それで俺も、つられてムッチのほうに視線を投げた。  ムッチとはしゃいでた奴等が3人から5人に増えてた。  あんな楽しそうにクラスの連中と騒いでんのに、なんでムッチはちゃんと学校来なかったんだろうな。  学校来ないで女と遊んでたんだろうけど、それを急にやめたのはなんでだ?  学校が楽しくなったからか?  俺が来てから?  ……ちょっと待て。  まさかムッチ、俺のこと……! 「ビー君、変な誤解させる前に言っとく。アイツは根っからの女好きだ」 「え!?ああっ、わかってるわかってるっ」  あっぶねぇ……あやうくムッチを俺に恋する男にするとこだった……。  ムッチがああやって男相手にスキンシップしまくるのも、スゲェ自然に男同士で付き合ってるだのなんだのって冗談言えるのも、多分男のことを全く意識してないから出来ることなんだろうし。  少しでも意識しちゃったら、やっぱちょっとは躊躇うよなぁ……。 「朝からちゃんと学校に来て、家に女連れ込まなくなったってことは、家にいたくねぇ理由でも出来たってとこかな。ビー君なんか聞いてる?」 「いや……。カッチは?」 「俺もなんも聞いてない」  出会ってそんなに経ってねぇ俺に話さねぇのはわかるけど、カッチにも話してねぇってどういうことだムッチ。  そんな話しづらいことなのか?  家庭の事情だとすると……、 「もしかして、親父さんとなんかあったとか……?」 「多分そうだろうね。アイツ、親父さん絡みのことはあんま話したがらねぇし」  そりゃあ、まあ……話したくねぇっつーか、話しづらいよな……。  ムッチの親父さん、アタマに『ヤ』のつく自由業の人らしいし。  俺もカッチも、ムッチからそれだけは聞いてる。  いや、友達の親が何してる人かなんて正直どうでもいいし、何してる人だろうと人様のご家庭のことに首突っ込む気はねぇけど……。  ねぇんだけど……。 「ムッチ、親父さんと喧嘩して入院したことあったんだろ?それ考えるとスゲェ心配なんだけど……」 「実は俺も。でも見た感じ元気そうじゃん?」 「うん。つか、心なしか……太った?」 「それな。やっぱそう思う?」 「うん。初めて会った時はもっと痩せてたし」  なんとなくそうかなとは思ってたんだけど、さっき抱きつかれた時確信した。  ムッチ絶対太った。 「最近のムッチ、健康的だよね」 「マジでそれ。親父さん絡みで家にいたくなくて、なのに太るくらいメシ食って規則正しい生活してるんだよな」 「もしかして、親父さんが普通の職業に就いたとか?」 「ああ、それもあるか。俺は親父さんが再婚でも考えてんじゃねぇかなと思った」 「再婚?」 「今ムーの家に、毎日メシ作ってくれて、毎朝起こしてくれる女の人がいるのかもしんねぇなと」 「それだ!絶対ェそれだ!」  メシ作ってくれてるのが自分の彼女だったら、絶対ムッチは俺達に話してる!隠す必要ねぇし!  そもそも彼女だったら家にいたくねぇなんてこともねぇはずだ!寧ろいたいだろ!常識的に考えて!  でもそれが親父さんの……ってなったら、確かにムッチは言わねぇかもしんねぇ。  ムッチは、今住んでる家にはお袋さんとの思い出があるって言ってた。  あと、ノブ君のお袋さん……義理のお母さんのことを凄くいい人だとも言ってた。  因みにムッチから「引っ越した」なんて話は聞いてない。  ……お袋さん、それから義理のお母さんと住んでた家に、また別の女の人が来たとかなったら、そりゃ複雑な気持ちにもなるよな。  カッチの推測通り、毎日メシ作ってくれて朝も起こしてくれてるんだとしたら、その人も凄くいい人なんだろうけど……。

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