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第3話

「揃っているか?真城君」 「あ、はい!」 川岸部長に呼ばれ、席を立ち、白いテーブルの前に来た。部署全員の視線が一気に降り注ぐ。着替えた新品の白衣に穴が空いてしまいそうだった。 「みんなも分かっていると思うが、今回から真城もこのチームに加わることになった」 「よろしくお願いします。」 頭を下げるとまばらではない"マニュアル"通りの拍手が聞こえてきた。 「もう、いい。頭を上げろ」 「あ、はい」 隣でコホンと音がし、集中力をそっちにむける。 白髪の頭をした前チームリーダーがにこやかな笑みを浮かべた。 「皆さん、おはようございます。春の顔から夏の顔色を見せた鮮やかな緑色の芽を出勤前に見る度、私も頑張ろうと思うのですね〜。おっと、こりゃ失礼。今回からは新しいメンバーとして真城 一樹(ましろ いつき)君も参加することになります。新作お菓子の開発の道のりは決して平坦な道のりではありませんが、皆で力を合わせ、明日に関わる全ての人に笑顔が食べて、喜んでいただけるようなお菓子を作りましょう」 穏やかな物言いとは裏腹に熱のある言葉にチーム内の温度が上がったのを肌で感じた。 「そして、前田前チームリーダーには監修を務めて下さることになった」 「川岸君、私はもうここの正式メンバーではないし、前ちゃんでいいよ?」 「前ちゃん?」 「ん〜?あ、皆さんは知らないか。実は……」 「おほん、こほん、こほんっ!!これからは…ま、前田先生とお呼びするように。それでは解散」 立派な胸筋を持った耳が赤く染まった部長の掛け声により、各々は作業に入った。

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