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31《ケンカ腰》
「…こんなもの、今すぐ捨てろ!」
「……イヤです」
首を横に振り…拒否の言葉をだすが…
「っ…」
男は、反抗する東洞を見て、カッとなり…
俺が作った料理の皿を掴み、捨てようと流しに持って行こうとする。
「嫌、やめて!お願い…」
その男に縋るように止める東洞。
「おい、やめろよ」
俺もさっと、皿を奪い返しながら止める。
「あんたは今すぐ帰れ!部外者が!」
「な、」
いきなり食ってかかる男…
「上司かなんか知らないが、こいつに近付くな!」
声を荒げ、俺に怒鳴る。
「はぁ?」
訳が分からず返す言葉を返せずにいると…
「優志さん、やめてください!」
俺を庇う東洞だが…
男は怒りが収まらない様子で…
「だいたい、尊は仕事なんかしなくていいんだ!あんた上司だろ、ちょうどいい、尊は今日限りで仕事は辞める、そう会社に伝えとけ!」
「優志さんッ!…国近さんごめんなさい…違うんです!」
「…お前は何なんだ、突然出て来て…東洞は、仕事を頑張ろうとしているんだ…勝手に辞めるだなんだと…」
「うるさい、お前らには俺たちのことは理解出来ない、さっさと帰れ!二度と来るな!」
男は東洞を守るように片腕に抱き寄せ、敵視した眼つきで睨みながら叫ぶ…
「…分かった、けど料理は捨てるのはもったいないから俺が持って帰るよ」
何が何だかの状態だったが…
とりあえず、帰った方が良さそうな雰囲気に…
せっかく作った料理を捨てられるのは気分が良くないので、料理にラップをかけて持って帰ることにする。
「…国近さん待って、」
引き留める言葉を出す東洞だが…
「尊…」
やはり男がそれを制する。
睨まれ、東洞は言葉を続けられなくなる。
「…じゃな東洞、邪魔したな…」
「…国近さん」
東洞を見ると、やや哀しい瞳をむけていた…
「……」
何か声をかけたかったが、男が早く帰れとばかりに睨みをきかせていたため、息をつき、そのまま二人を残して帰宅した。
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