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37《嬉しくて》
「ならどーぞ」
そんな様子に自然と笑顔が浮かぶ。
「いただきます!!」
「そんなに味変わらないだろ?」
「はい、すごく、美味しいです…本当に…っ」
夢中で食べる東洞…
その瞳から不意にポロっと涙が零れ落ちる。
「え、おいおい泣くほどか?」
その反応には、少し驚いてしまうが…
「国近さん…ありがとう、ございます…」
諦めていたことが叶う喜びを噛み締めて…
涙をぬぐい、お礼を言いながら食べ続ける東洞。
「……」
そんな東洞の頭を優しく撫でてやる。
可愛いな…と無意識に思っていた…。
そして、食事を終えて、本題に入る。
「昨日の奴は誰なんだ?」
「…はい、名前は天河守優志さんで…僕の身体にある結界や家の周りに結界を張って悪いものが入らないようにしてくれる…結界師の一族で…天河守家はずっと昔から霊媒師の東洞家専属の結界師だったんです」
俺の問いに、ゆっくり説明をはじめる。
「……」
霊媒師の他にも専門の特殊能力者がいるのか…
「その中でも、優志さんは僕が生まれた時から、僕専属の結界師としてずっと見守ってくれている人で…」
やや表情を落として話す東洞。
「なるほど、それで俺に気付いた時、とっさにお前を守ろうとしたんだな…」
東洞を守ることが身に染み付いているんだろう…
「優志さんは…特殊な能力を持たない人間を毛嫌いしています、だから昨日のように国近さんに口調を荒げて追い払おうとしてしまったんです、留守中に勝手に招いたのも気に障ったようで…」
「…そうか、」
特殊能力者の家系…
あいつはあいつなりに苦労して来たんだろう…
「すみませんでした」
また頭を下げる東洞。
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