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第19話

龍二side 俺は友人である柊が好きだ。 中学の頃は今のように誰かと気兼ねなく話すやつではなかった。 話すとすれば小学校から同じやつとか。 自分から友達の輪に入っていくやつではなかった。 …それは今もか。 でも俺は友人と笑って話す柊に惚れた。 明るくて可愛くて、1年生はクラスが違ったから柊と同じクラスにいる俺の友人に名前を聞いた。 「あそこの席のあいつ、誰?」 「ああ、野山柊のこと?」 「野山、柊…」 「龍二、気になるの?」 悟に聞かれた時、誤魔化すために「や、別に」と答えた。 2年のクラス替えで同じクラスになった。 いつも通り悟と登校して掲示板を見れば、クラス名簿に野山柊と書かれていた。 あいつだ!、と思い俺は心の中でガッツポーズをした。 仲良かった奴と離れたのか、柊は窓側の1番後ろの席に座り窓の外をずっと眺めていた。 「龍二ー、席自由だって!」 「ほら!」と悟が指す黒板には「席は自由に決めてくれ」と書かれていた。 「マジか」と心の声が小さく出た。 俺はすぐさま柊の隣の席に鞄を置いて話しかけた。 「なぁ、隣いい?」 悟も柊の1つ前の席に座り後ろを向いてきた。 「う、うん。いいよ」 「サンキュ。俺、川崎龍二」 「僕は杉谷悟だよ!」 悟はニコニコしながら言う。 「…野山柊」 「よ…「よろしく、野山くん!」 「よろしく、杉谷くん。川崎くんも」 「あ、ああ」 それから俺と柊と悟は休み時間の度に話すようになった。 数日もすると柊も慣れてきて名前で呼び合うようになった。 「へぇー、じゃあずっと一緒なの?」 「うん!」 「いいなぁ」 「柊はいねぇの?」 「んー…幼なじみはいないかなぁ。マンションだけど話したことのある人あんまりいないし」 最初は部屋から出ないやつなのか、と思った。 だが、それは違った。 「俺の家、母さんの願いでマンションの最上階でさ。同じマンション内の子供は話しかけてこないかな。弟は幼稚園一緒の子とかいるから、良く遊んでるけど」 そう言って柊はどこか悲しそうに笑った。 それを読み取ったのか、悟が提案する。 「じゃあ、休みとか放課後一緒に遊ばない?」 ナイスだ悟! 「休みはいいかもだけど、放課後は無理かな」 「毎日?」 「うん。部活に入る予定はないんだけど、弟の迎えがあるから」 「じゃあ、休みの日。親に許可取って遊ぼう!僕の家か龍二の家で」 悟がそう言うと柊は嬉しそうに笑って頷いた。 俺はまたそんな柊に内心ときめいていた。

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