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「あと、エネルギー効率を改良した、ロケットエンジンの設計図も入ってます。」 「………。」  確かに、それも水上が氷室に確約していたものだった。 「…癖のあるエンジニアがいると言っていたが、まさか君だったとは…。」  氷室はケースを持ったまま、硬直した。  弓削がパソコンを用意してくれたので、璃音は起動させたパソコンに、メモリーカードを差し入れた。 「本当は、もっと精密な物をお渡ししたかったんですが、あまりにデータの容量が大きすぎたので…。  普通のパソコンだと、メモリが追い付かないので、パンクさせてしまうんです。  あとで、僕の部屋のパソコンから、もっと正確な物を持って来ますので、今日はこれで我慢して下さい。」  画面に映された設計図は、確かに車のエンジンだった。  もう一枚の方には、車の車体のデザインや設計図、風圧などのデータまで入っていた。 「父は、仕方なく祖父の跡を継いだんですが、本当は氷室社長の下で働きたかったと言っていました。  だから、会社と畑違いの自動車絡みの設計にかかわったんです。」  俯きながら話す璃音の顔は、何だか複雑な表情だった。 「それと…」 「それと?」 「4000億の半分は、僕が原因なんです。  僕が使うのは、スーパーコンピューター数台分のサーバーが必要だったので…。」 「………はい?」 「そちらもある程度微調整して、氷室重工の研究室にお渡しします。  父の無茶振りに付き合わせてしまって、すみませんでした…。」  色々突っ込み所のある親友だったが、その息子は輪をかけて突っ込み所が満載だ。  大学に研究室を持ち、次世代型ハイブリッドエンジンを設計する中学二年生など、聞いた事も無い。  ましてや、ロケットエンジンまで設計するなど、虚言にしては話が出来すぎている。 「それでなんですけど…。」 「…?」 「ご迷惑をおかけしてしまった4000億、社長さんにお返ししたいんです。  どうしたらいいですか?」  深い黒瞳が、氷室の顔を覗きこんできた。 「設計したエンジンや、自動車が発売されれば、多少は目減りするでしょうけど、まだまだマイナスだと思うんです。  何かで穴埋めしなきゃいけないでしょう…?」 「女の子だったら、体で返すってのも有りなんだが…。」  氷室自身、思いがけない言葉が口を突いて出た。

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