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 微妙な気分でバスルームを後にすると、先刻散々抱き合った寝台の上で璃音が寝入っていた。  パソコンを操作していたようで、手を伸ばしたまま行き倒れのような器用な体勢で寝ている。  氷室のパジャマのシャツだけを着ているので、裾から細い脚が覗いて何となく目を反らす。  太ももや膝の裏にも、氷室がつけた花びら模様が散っているからだ。  深く寝入っている体を抱き上げ、枕に頭を乗せ毛布をかける。  …と、璃音に薬を塗ってやらなければいけなかったんだと気づき、毛布とシャツを剥ぐ。 「………」  自分のした所業とはいえ、全身に散ったキスマークは、湯上がりという事もあり、なまめかしく見えた。  くうくうと寝入っている璃音の肌に軟膏を摩り込み、後孔にはデリケートな部分用の薬を塗り込む。  下手に欲情すると絶対歯止めが利かなくなると思い、「平常心だ、頑張れ俺!!」と心がけながら、何とか塗り終えて、璃音にシャツを着せ毛布をかけた。 「……………?」  一通り終わった所で、視線を感じる。  有り得ない事だが、パソコンの画面と目が合った………そんな気がした。  気のせいだと割り切り、照明を落として部屋を後にする。  ドアが閉まると同時に、スリープモードだった筈の画面が映像を映し出す。  そこには、琥珀の瞳の黒豹がいた…。 「おや、お珍しい。  旦那様がベッドから這い出てらっしゃるとは」  居間で書類を纏めながら、弓削が驚いた。 「まだ日付も変わってないだろ?  私にもコーヒーをくれ」  どっかりとソファーに座り、ため息をつく。  出されたコーヒーは、弓削自慢のエスプレッソだ。 「璃音様はお気に召しませんでしたか?  随分と可愛く啼かせてらしたのに…」  ぶふうっ!!  派手に吹き出す氷室。  しれっとしてカウンターに肘をつき、うっそりと笑う弓削。 「き…、聞いていたのか?」 「聞いてたというより、だだ漏れで聞かされたんですよ?  なかなか可愛らしい殺し文句やら、旦那様に懇願する健気っぷりやら甘い啼き声やら…。  使用人達も、旦那様が璃音様を啼かせまくりで仕事になりませんでしたので、夕食前に帰らせました」 「………」 「特に男性陣は、股間の危機だと泣きつきましたのでね…」  さすがに黙るしかない。

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