28 / 454
・
微妙な気分でバスルームを後にすると、先刻散々抱き合った寝台の上で璃音が寝入っていた。
パソコンを操作していたようで、手を伸ばしたまま行き倒れのような器用な体勢で寝ている。
氷室のパジャマのシャツだけを着ているので、裾から細い脚が覗いて何となく目を反らす。
太ももや膝の裏にも、氷室がつけた花びら模様が散っているからだ。
深く寝入っている体を抱き上げ、枕に頭を乗せ毛布をかける。
…と、璃音に薬を塗ってやらなければいけなかったんだと気づき、毛布とシャツを剥ぐ。
「………」
自分のした所業とはいえ、全身に散ったキスマークは、湯上がりという事もあり、なまめかしく見えた。
くうくうと寝入っている璃音の肌に軟膏を摩り込み、後孔にはデリケートな部分用の薬を塗り込む。
下手に欲情すると絶対歯止めが利かなくなると思い、「平常心だ、頑張れ俺!!」と心がけながら、何とか塗り終えて、璃音にシャツを着せ毛布をかけた。
「……………?」
一通り終わった所で、視線を感じる。
有り得ない事だが、パソコンの画面と目が合った………そんな気がした。
気のせいだと割り切り、照明を落として部屋を後にする。
ドアが閉まると同時に、スリープモードだった筈の画面が映像を映し出す。
そこには、琥珀の瞳の黒豹がいた…。
「おや、お珍しい。
旦那様がベッドから這い出てらっしゃるとは」
居間で書類を纏めながら、弓削が驚いた。
「まだ日付も変わってないだろ?
私にもコーヒーをくれ」
どっかりとソファーに座り、ため息をつく。
出されたコーヒーは、弓削自慢のエスプレッソだ。
「璃音様はお気に召しませんでしたか?
随分と可愛く啼かせてらしたのに…」
ぶふうっ!!
派手に吹き出す氷室。
しれっとしてカウンターに肘をつき、うっそりと笑う弓削。
「き…、聞いていたのか?」
「聞いてたというより、だだ漏れで聞かされたんですよ?
なかなか可愛らしい殺し文句やら、旦那様に懇願する健気っぷりやら甘い啼き声やら…。
使用人達も、旦那様が璃音様を啼かせまくりで仕事になりませんでしたので、夕食前に帰らせました」
「………」
「特に男性陣は、股間の危機だと泣きつきましたのでね…」
さすがに黙るしかない。
ともだちにシェアしよう!