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よくよく考えると日も高い内からの事で、使用人達にだだ漏れなのも仕方ない。
ましてや、璃音が初めてだというのに、体を繋いで達かせた後、歯止めが利かなくなり、抜かないまま二度、三度と啼かせてしまった。
「で…、如何です?
璃音様のお体との相性は」
「………悪くない。多分…」
「多分…?」
「初めてなのに、後ろで感じて達ったから、余程素質があるのか相性がいいかのどちらかだと思う」
弓削は目をしばたたく。
体の相性がよかったのに、悩む意味が解らない。
「無垢で可愛らしくて、しかも一途で健気。
私の好みと真逆なのがネックだなと…」
「でも、淫らでフェロモン垂れ流しな相手で一ヶ月持たずに来たんですから、たまには趣向を変えて頂かないと。
私としましては、璃音様にはせめて二ヶ月は頑張って頂きたいですねえ…」
コーヒーを啜りながら、弓削が呟く。
「入院されてる瑠維様の方は、ビジュアル的には確かに旦那様の好みですが、いかんせん、あの方は…」
「………何か問題があるのか?」
「…直情馬鹿でいらっしゃるので、私としてはお奨めいたしかねます」
「………」
「逆に、璃音様は見た目は水上夫人似ですが、中身は父上そのまま瓜二つ。
思慮深く、素直、健気…。
今までの恋人のように、旦那様を手酷く棄てたりする可能性は無きに等しいでしょうね…」
「安全パイだと、燃えないだろうが…」
「そうでしょうか…?
安全パイなのは今のうちだけで、今に旦那様の方が振り回されるのが、この弓削にはありありと予想出来るのですが…」
クスクス笑い、主の悪趣味を窘める。
「甘くて美味しそうとか言われたがな…。
どうも猛獣の子供に見えてしょうがない」
「それは重畳ではないですか。
充分に懐いていただき、美味しく召し上がって頂けば宜しいんですよ。
この際、悪食を改めて真っ当な方向に戻って頂ければ、私も助かります」
ザックリ斬り棄てられ、開いた口も塞がらない。
元々、水上の親戚筋絡みで預かった筈の弓削は、一社員から秘書に昇格した程有能で。
確かに、今まで彼が押し通した事に外れは無かったが…。
「そこまで璃音を推すのはどうしてなんだ…?」
「可愛らしいからですが、何か?」
きっぱり断定されてしまった…。
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