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少し長い睫毛がふるふると震える。
首筋や胸元に口づけると、身の内を灼く熱に耐え切れずに唇が酸素を求めて喘いだ。
「は…っ、う………ぅ」
氷室の髪を、力が抜けた指が掻き回す。
その指が後頭部を掠めた瞬間、背中がザワリとした。
「ん…ッ」
不覚にも感じてしまって、璃音の肌に歯を立てる。
「あう…ッ」
内出血ではなく、表面に薄く血が滲み、胸の尖りに歯型を付けてしまった。
「ごめん、痛かっただろ?」
滲んだ血を舐め取る。
「あッ、やぁ…んっ」
可愛らしい反応が返ってきて、氷室は更に舌を這わせる。
再び滲んだ血をゆっくり舐め取ると、甘い味が口の中に広がった。
「ん…、ああ…っ」
鉄っぽさの薄い甘い味が、氷室を少しずつ狂わせる。
「龍…嗣…、もっと……、もっと舐めて…」
掠れた懇願は更に氷室を煽り立て、いじらしい言葉をもっと聞きたくなる。
「舐めるだけでいいのか…?」
「………っ」
「教えてくれないと、璃音を気持ちよくしてあげられないだろ…?」
璃音が泣きそうになって、口をぱくぱくさせる。
それでも氷室は璃音の懇願を待った。
「璃音、どうする…?」
両胸の蕾を弄られたまま意地悪く聞かれて、璃音は赤い顔で固まった。
「あ、あの…っ」
「言わないと、分からないなあ…」
なにを璃音が欲しいのか、分かっていて、わざと言わせたくなる。
昨夜、箍が外れて氷室を煽ったような、無意識に漏れる言葉を。
耳まで真っ赤になって、璃音は口ごもる。
「あ…、あの…」
半分涙目で、「言うに言えない」という顔がまた堪らなく可愛いのだが。
「璃音、教えて貰わないと」
「………っ」
段々、涙目だったのが本当に涙が零れはじめる。
何だかおかしい、しかも、背後から殺気が…。
ばすっ!!
「…ばすっ?」
恐る恐る振り返ると、いつの間に来ていたのか、秘書の弓削が立っていた。
しかも、分厚い手帳を片手に。
「………何故いるんだ…弓削…」
「本日の業務の確認をしていたら、璃音様の泣き声が微かに聞こえて来たので、寝ぼけてらっしゃるのかと様子を見に来たんですよ。
そしたら、年中発情期のエロ魔神が、璃音様を啼かせまくっていた、と」
「え…、エロ魔神…」
氷室が絶句している
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