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「はい、服の外から見える範囲は綺麗に消えましたよ」  自分の仕事の仕上がりに満足したのか、ニコニコ如才なく笑い、璃音の頭を撫でた。 「あ、ありがとうございます…」 「本当に中身はお父様にそっくりですねぇ。  …だからこそ、鬼夜叉を怖れながらも、璃音様を皆が欲しがったんですが…。  まさか、璃音様ご自身が早々に将来の恋人を選んでしまわれるとは、誰も予想出来ませんでしたし。  身の危険を感じて、エロ魔神に噛み付いた訳じゃないと思いたいのですがね…」 「…?」  苦笑いして、クリーム状の物を薬指に取る。 「璃音様、すみません。  少しだけ我慢して下さい。」 「え…?  あっ、………やっ」  璃音が強張り、首を竦める。  弓削の、氷室とは違う細身の手が璃音の血が滲んだ胸の蕾に触れた。 「ちょっとだけ、我慢です」  弓削の人差し指が、ゆっくりと蕾を撫でる。  ひくんっ。  璃音の体に電流が走り、力が抜けた。 「やぁ……ん…っ」  輪を描くように撫であげられ、濡れた何かに蕾が包まれる。  チュク…  弓削の唇が、璃音の蕾を含んでいた。  チュプ… 「ん、んん…」  全身から力が抜け、璃音はベッドに倒れた。  何故?  自分を狂わせる存在は、愛しい龍嗣だけなのに…。  璃音は戸惑いながらも、弓削の唇を拒めない。  脳髄が灼けそうで、思考も解ける。 「璃音様?」  耳元で囁かれるだけで、どんどん力が抜けていく。 「幼い璃音様が旦那様を噛んだように、水上の者が何人か璃音様の首筋を甘噛みしています。  移り気な旦那様を危惧した鬼夜叉が…、貴方の母上が、一族の中で最も貴方に執着の強い者達を選び出し、物心がつく前の貴方を噛ませたんです。  私もその一人ですがね」 「う…そ…!?」 「本当です」  尚も蕾を吸われ、体が跳ねる。 「でなければ、今、私の愛撫に反応する筈が無いんですよ?  愛しい璃音…。  鬼夜叉が噛んでいいと許した時、全身を駆け抜けた衝動は忘れられません。  今は、貴方が首筋を噛んだ旦那様に優先権がありますが、もし、旦那様を落とせなかったら、貴方を噛んだ者達が、璃音様、貴方を奪う。  嫌なら、全力で旦那様を落とす事です。  でなければ、私も貴方を奪う事になりますからね?」  甘やかな宣言だった。

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