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「璃音様の学校には、私が必ず送り迎えをいたしますので大丈夫だと思いますよ、瑠維様」
さりげない弓削の助け船に、二人が「グッジョブ!!」な顔になった。
「でも…」
「水上の一族の皆様が、荊櫻(りお)様恐さに璃音様を引き取られなかったので…。
これから冬にもなりますし、放ったらかしもできませんよ。
ましてや野宿なんて、以っての外でございましょう?
確かに通学に時間がかかりますが、電車となると璃音様が痴漢に遭う確率が格段に上がりますし…」
「………痴漢っ!?」
「何故そこに食いつくかな…」
瑠維はがばりと起き上がり、氷室は高速で振り向き、璃音は二人の反応の早さに狼狽した。
「璃音、お前っ、大丈夫なのかっ!?
痴漢に遭ったのか?遭ったのか!?
兄ちゃんが倒れてる間に、お前、そんな目に遭ってたのかっ!?」
「………」
がくがくと兄に肩を揺さぶられ、頭が前後に揺れる。
「………うん」
実際に遭っていたので、素直に頷く。
「どんな事されたんだっ!?
お前、どんな目に遭ってんだあっ!?」
「あのさ…、興奮するのって良くないんじゃないの?
それに、大きい声で言いにくいから、耳貸してよ…。
ね、絶対大きい声出さないでよ?約束だよ?」
前置きしてから、徐に。
こしょこしょこしょこしょ…。
璃音に耳打ちされてる瑠維の顔が、見る見る赤くなる。
「な…っ、何だよそれっ!!
ケツ揉まれて、前も揉まれて、胸も揉まれて、ワイシャツや下着の中まで手ェ突っ込まれて揉まれただとおっ!?
しかも、相手、男おっ!?」
「そんな事までされてたのか君はっ!?」
二人の反応に固まる。
「………だから…、それじゃ内緒話の意味が無いじゃないか…」
ガックリうなだれる璃音。
「………璃音様の貞操の危機もありますので、氷室家での預かりは了承して頂けますね、瑠維様?」
「いいも何も、璃音を放っといたらどうなるか判んないなら、氷室さんとこで預かって貰うしかないだろ!?
お願いしますっ、コイツ、預かってやって下さい!!」
氷室には、
「お願いしますっ、コイツ、預かってやって下さい!!」が、
「お願いしますっ、コイツ、貰ってやって下さい!!」という幻聴に聞こえたに違いない…。
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