45 / 454

「た…、食べた!?  食べきった!?璃音を!?  いやあああああああああああああっ!!  不潔よおっ!!」  悲劇のヒロインを彷彿とさせるヨロメキをしてから、猫はパタリと倒れた。 「嘘!!嘘よッ!!  あの純真無垢な璃音が食べられちゃったなんて…っ!!」  暗闇の舞台の上でスポットライトを当てられ、涙を流すヒロイン状態の猫…。  あちこちでエロ魔神呼ばわりされた氷室も、顔が引き攣ったままだ。  今更ながら罪悪感が込み上げてきていたりもする。  先程、走って行った璃音は、少しよろけ気味で片足を引いていた。  物事は、程々が丁度良いと言う事かも知れない。 「すみません、お待たせしま…し…た……?」  息を切らせて戻ってきた璃音は、床に突っ伏して泣く猫を見て固まった。 「みあ…?」  猫は、ガバッと起きると、璃音に走り寄り、猛烈な猫パンチを食らわせた。  ぴしぴしぴしぴし!! 「痛い痛い痛い痛い痛い」 「璃音っ!?  アナタ、馬鹿じゃないのっ!?  自分のパパと同じくらいの年回りの人と番いになるなんで、何考えてるのよっ!!」  ぴしぴしぴしぴし!! 「痛い痛い痛い痛い痛い」 「ちょっと!!否定しなさいよ!!」 「みあさん、旦那様は璃音様がご幼少の砌にお選びになった方ですし…。  食べ残しされるよりは、美味しく食べていただく方がいいと思いますよ?」  弓削がとどめを刺し、猫は両手を頬に当て、再びムンクの叫び状態になった。 「た…、食べ残す!?  美味しく食べきる!?  璃音を!?  いやあああああああああああああっ!!  不潔よおっ!!」  再び床に突っ伏した猫。  突っ込みようがなくなり、黙るしかない璃音なのだった。  暫くして猫が落ち着いてから、璃音はパソコンから落としたデータとソフトを氷室に渡した。 「これがハイブリッドエンジン、この赤いのが車体デザインと風圧データ、この緑がロケットエンジンです。  それと、ソフトは最新のドライブシミュレーターです。」 「あ、ああ…。  ありがとう…。  それにしても、君が作ったあの猫…、やたら人間っぽいリアクションをするんだが、あれも君の設計なのかい?」 「ボディは僕が作りましたが、思考パターンは母が…。  一般的な女の子がモデルだとか言ってましたけど」 「………」  何か、水上夫人の作為を感じるのは気のせいか? 「何だか口うるさい姉さんみたいで…ホントにすみません」

ともだちにシェアしよう!