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「た…、食べた!?
食べきった!?璃音を!?
いやあああああああああああああっ!!
不潔よおっ!!」
悲劇のヒロインを彷彿とさせるヨロメキをしてから、猫はパタリと倒れた。
「嘘!!嘘よッ!!
あの純真無垢な璃音が食べられちゃったなんて…っ!!」
暗闇の舞台の上でスポットライトを当てられ、涙を流すヒロイン状態の猫…。
あちこちでエロ魔神呼ばわりされた氷室も、顔が引き攣ったままだ。
今更ながら罪悪感が込み上げてきていたりもする。
先程、走って行った璃音は、少しよろけ気味で片足を引いていた。
物事は、程々が丁度良いと言う事かも知れない。
「すみません、お待たせしま…し…た……?」
息を切らせて戻ってきた璃音は、床に突っ伏して泣く猫を見て固まった。
「みあ…?」
猫は、ガバッと起きると、璃音に走り寄り、猛烈な猫パンチを食らわせた。
ぴしぴしぴしぴし!!
「痛い痛い痛い痛い痛い」
「璃音っ!?
アナタ、馬鹿じゃないのっ!?
自分のパパと同じくらいの年回りの人と番いになるなんで、何考えてるのよっ!!」
ぴしぴしぴしぴし!!
「痛い痛い痛い痛い痛い」
「ちょっと!!否定しなさいよ!!」
「みあさん、旦那様は璃音様がご幼少の砌にお選びになった方ですし…。
食べ残しされるよりは、美味しく食べていただく方がいいと思いますよ?」
弓削がとどめを刺し、猫は両手を頬に当て、再びムンクの叫び状態になった。
「た…、食べ残す!?
美味しく食べきる!?
璃音を!?
いやあああああああああああああっ!!
不潔よおっ!!」
再び床に突っ伏した猫。
突っ込みようがなくなり、黙るしかない璃音なのだった。
暫くして猫が落ち着いてから、璃音はパソコンから落としたデータとソフトを氷室に渡した。
「これがハイブリッドエンジン、この赤いのが車体デザインと風圧データ、この緑がロケットエンジンです。
それと、ソフトは最新のドライブシミュレーターです。」
「あ、ああ…。
ありがとう…。
それにしても、君が作ったあの猫…、やたら人間っぽいリアクションをするんだが、あれも君の設計なのかい?」
「ボディは僕が作りましたが、思考パターンは母が…。
一般的な女の子がモデルだとか言ってましたけど」
「………」
何か、水上夫人の作為を感じるのは気のせいか?
「何だか口うるさい姉さんみたいで…ホントにすみません」
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