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「………撤去も早く、しかも的確…。
氷室重工には、是非とも欲しい技術だと思いますよ?
旦那様…、どうします?」
「…参ったな」
氷室がベンチに座り込んだ。
「地雷撤去モードの土蜘蛛マム、機雷撤去モードの水蜘蛛マムと、カスタマイズも出来ますけど…。
やっぱり実用化は難しいですよね…」
困ったように笑う璃音は、子供の顔になっていた。
綺麗な緑色の蜘蛛は、璃音に抱っこされ、ピンク色に輝く。
氷室重工が防衛省から依頼されていたのは、正に地雷撤去、機雷撤去のロボット…。
操作する人間に懐き、従順であり、しかも必要に応じて増やせる。
埋まった地雷の探知に優れ、外しが無い。
二重三重の意味で欲しい技術だった。
「ああ、でも、兵器に転用しようとすると僕の所に逃げてくるようになってますから、気をつけて下さい。
ね、マム~?」
「ハイ。ケツマクッテ逃ゲマスヨ」
ピンク色になった蜘蛛は、璃音にがっしりしがみついた。
「軍事転用不可の地雷撤去メカ…。
璃音、もし良かったら、うちの部門に協力してもらえないかな…?
丁度、今、開発で手こずってるんだが…」
「多分、大丈夫。
一応、教授に聞いてみるね?」
役に立てる…その思いが璃音を微笑ませていた。
璃音の研究室に戻り、改めて室内を見回すと、ただの模型だと思っていた物が、ほぼ実用化が可能なものばかりだったことに気づく。
また、反重力式の電動カート、稲藁や農産廃棄物を加工して作るバイオ硝子、放射性物質を食べて無害化するメカ…等など、思ったとしても現実に作る事が困難な物が、実用化に果てしなく近い状態にあったのだ。
大人でも難しい事を、若干14歳の子供が成し遂げようとしていたとは、氷室には衝撃的だった。
常識に囚われない柔軟な思考と、インスピレーション。
金銭に無頓着でありながら、知識に対する貪欲さを持つ子供…。
異能の生まれやすい家系だとしても、持ち合わせた知識と思考と体の成長の遅さのアンバランスさが際だっている。
璃音自身は気づかないのだが…。
「改めて、君の技術を欲しいと思う。
大学を通す事になるだろうけど、かなりの確率で実用化できるはずだよ」
「喜んで貰えて良かった」
璃音の表情が、柔らかくなった。
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