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「もしも、龍嗣が僕を愛し抜いたら、弓削さん達はどうなるんですか…?」 「救済措置があるんです」 「救済?」 「ええ。  必ずしも選んだ相手が健在とは限らない。  事故や病気等で相手を喪失したりした場合、相手を選び直す事が出来ます。  だから、そこは余り気にしないでいいんですよ」 「死なない? …本当に?」 「死にません」 「死なないで下さい。  僕なんかの為に、命を削らないで下さい。  与えられた命の分は、絶対………絶対生きていて…」 「あなたがそう望むなら…」  泣き腫らした瞼に口づけを落とす。 「ああ…、  死なない代わりにと言っては何ですが、我慢出来なくなった時は、こうやって腕の中に来てくれれば、それでいいですよ。  ハグさせて下さい」 「それで、弓削さんは大丈夫…?」 「ええ。  ギュウッとしていただけたら、それで充分です。  もしかしたら、それも貴方にとっては辛い事かもしれませんが…」 「大丈夫…。  辛くないです…」 「唇以外ですが、キスを一つ…宜しいですか…?」  怖ず怖ずと頷いた璃音の瞼は、泣き腫らして赤い。  ほんのり熱い瞼に口づけを落とすと、真珠のように煌めく涙が零れ落ちる。 「………ん、………くぅ…っ」  再び吃逆混じりで泣き出した璃音。 「すみません、もう一つ…」 「あ……、んん……っ」  花びらを思わせる唇を捕らえ、弓削は恭しく口づける。  お互いの気持ちを捧げるように、軽く啄み合う。  あえかな吐息が混じり合い、絡ませた指の先から、ジワリと熱が伝わっていった。  そのキスの間、弓削のジャケットの内ポケットに突っ込まれたままの猫は、いい雰囲気の二人の邪魔をしないように、身じろぎもせずに大人しくしていた。 『何よお!!  私の存在を忘れて、ラブラブじゃないのっ!!  あんなエロ魔神なんかより、こっちの方が余程璃音に合ってるワよっ!!  璃音、男の趣味悪すぎっ!!』  …と、心の中で猫が突っ込みを入れていたとは、二人は気づかなかったのだが。

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