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コクン…。
龍嗣の白蜜を飲み下し、小さく咽を鳴らした璃音は、
「………にがっ!!」
半べそになった。
「…何で飲む…」
脱力した龍嗣が苦笑いをして璃音を抱き寄せ、サイドテーブルのペットボトルを開けて、口移しで水を飲ませる。
甘く感じて、二度三度と飲ませた。
「…だって、龍嗣も僕の飲んだから…」
「そういえば、そうだったな…」
「だから、龍嗣のもって…思ったんだけど…」
何一つ経験の無い璃音には、龍嗣のする事が全て基本になる。
…勿論、口淫も…。
龍嗣が璃音の精を飲むなら、自分も龍嗣の精を飲むものだと、そう素直に璃音は受けとった訳だ。
「達く寸前で堪えて、私を気持ち良くしてくれるとは思わなかったな…」
しっとりとした黒髪を梳いてやり額に口づけると、背中に腕を回して抱きついてくる。
「だって、愛人1号としては、龍嗣が気持ち良くなるのが一番大事だったから…」
「あ…、愛人1号…」
璃音の微妙な言い回しに、龍嗣が絶句した。
「だって、僕…愛人でしょ…?」
苦笑いしながら髪を梳かれている璃音に、龍嗣は覆いかぶさるように抱きしめて、複雑な気分になる。
「愛してほしい」と言わずに「愛していいか」と問い。
「一方的に気持ち良くなるのはイヤだ」と言って、「同じ位気持ち良くなって欲しい」と、一生懸命悦ばせようとする。
弓削が漏らしていたように、本当に情の深い子供なんだと思う。
見た目は乱暴者の母に生き写しなのに、中身は忠犬タイプの父親そのもので、我が儘の欠片も無い。
ただ一人を愛し抜いて亡くなった、晶にそっくりの一途さが、この小さな体にある…。
そう思うと、一層愛しくなっていく。
穏やかに微笑む璃音の唇を啄み、首筋や胸、背中に散った紅い印を指でなぞり、身の内に燻る熱に再び火をつける。
「あ…ッ!!」
仰け反る体をきつく抱きしめ、蕩けるような口づけを、幾つも落とす。
ほんの一昼夜…。
ほぼ一昼夜の間に、ここまで愛おしくなるとは思わなかった。
龍嗣との行為に溺れながらも、深い愛を捧げてくれる璃音を。
だからこそ、言わなければ…。
耳元にも舌を這わせ、耳朶をやんわりと噛みながら、龍嗣は低く囁く。
「璃音、愛人契約を解除させてくれ…」
「え………っ?」
璃音が一気に青ざめた。
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