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「これ以上拗れたら入院させるからな?」  そう言って帰った白川の言い付け通り、弓削は部屋を暖め加湿器をかけた。  ベッドに沈み込む様に眠る璃音は、点滴と水薬が効いてきたのか顔色が少しだけ良くなった様に見える。 「今まで病気らしい病気をしなかったから、知恵熱なんじゃないの?」  枕元で尻尾をひと振りして、猫が呟く。 「すみません。  私が瑠維様を止め損ねたせいで、璃音様にはとんだとばっちりを…」 「仕方ないわよ。 我が儘でヤキモチ焼きのエロ魔神を怒らせた瑠維が悪いんだから」  ベッドの上からヒラリと降りると、猫がドアに向かう。 「どちらへ行かれるのですか?」 「リビングで固まってるお馬鹿に説教よ。  多分、時間かかると思うから、貴方は璃音についていて。  ついでに少しはくっついてもいいんじゃないの?  そろそろ禁断症状が出て来る頃だろうし」 「…ばれてましたか。」 「約二日間、璃音が啼かされっぱなしの声を聞かされて、我慢できる貴方の方がどうかしてる。  首を噛んだ相手が第三者と交尾してるのを、ここまで耐えられる水上の人間はいないワよ?  エロ魔神もいないんだし、やっちゃえば?  ワタシは見てない振りをしてあげられるし」 「恐れ入ります…」  身も蓋も無い事を言い、器用にドアを開閉して、猫が出て行った。  熱で朦朧としている璃音の額にそっと触れる。  冷却シートが温くなり、端が乾いてきていた。  新しい物と交換し、艶やかな黒髪を指で梳く。 「ん……」  深く寝入っていた筈の璃音が、うっすら目を開けた。 「………弓削さん…?」  焦点が定まり切れない璃音の額に弓削は自分の額をゆっくり当て、暫し見詰め合ったあと角度を変えて璃音の唇を啄む。  軽く、ただ触れるだけの啄みを、頭が朦朧としている璃音は大人しく受け入れた。 「………」 「すみません。 あなたが弱ってる所に…」 「………禁…断…症状…ですか…?」  弓削の危機を察し、璃音が手を伸ばす。 「はい…。助けて下さい」  再び璃音に口づけを落とす。 「風邪、弓削さんに感染っちゃう…」 「感染したら、楽になりますから、大人しくしてて下さい」  深く口づけ、舌が絡まる。 「ん………っ」  弓削の約一年振りの口づけは、かなり切羽詰まったものだった。

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