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「…すみません。  何時もならハグで我慢が出来るんですが、今日は完全に禁断症状なんです…」  璃音の唇を啄み、熱で蕩ける舌に自分の舌を絡ませた。  初めて交わした口づけと違い、弓削の舌を優しく吸い、絡められた舌は快感を誘う。  璃音の舌使いは、龍嗣に抱かれて教えられたものが混じり、弓削の精神を灼いた。  それでも、愛しい璃音と交わす口づけは涙が出そうな程に嬉しく、最も欲しいもので…。  熱で朦朧とする璃音が、禁断症状を訴える弓削を悦ばせようと、一生懸命に舌を絡めて吸ってくれるのは、至上の喜びになった。 「んふ……ぅ、っん、んん…」  ピチャピチャと、濡れた音が耳を打ち、弓削は脳髄が焼き切れそうな気がした。  書斎の中で、龍嗣に抱かれていた璃音の姿態。  二日の間、途切れ途切れに聞こえた掠れた喘ぎ声…。  本当は、自分が璃音から引き出したかったものだった。  そう思うと、更に甘やかに唇を啄み、舌を存分に絡ませたくなる。  お互いの鼻から抜ける甘い喘ぎと唇から漏れる吐息が、少しずつ理性を飛ばそうとした。  愛しい。  誰よりも。  血の呪縛がある分、龍嗣よりも深い執着が弓削を苛む。  その気持ちを篭め、深く深く唇を重ねる弓削。  そして、璃音自身も弓削の哀しさを癒すように、舌を使い、応え続ける。  躯を繋げられない分、その代償のように心をこめた口づけを返した。 「ふ…っ、ん…ふ、…ぅ」  名残惜しそうに離れた唇の間に、糸が引く。  弓削の激情が収まってきて、璃音の首筋を甘噛みし、そろりと舌を這わせた。  水上の執着癖のある者達がする、求愛行動にも似た行為…。 「ん………っ、やぁ…んっ」  背筋を駆け抜ける痺れに、璃音が身を震わせる。  膝をすり合わせ躯を捩って逃げようとする璃音の反対側の首筋も甘く噛み、舌を這わせてから弓削は耳元へと唇をずらす。 「私は変わらず愛していますよ、璃音…  でも、それは貴方の責任の範囲外ですからね?」  そう囁き、弓削は体を離した。  口づけで乱された呼吸が一瞬ヒクリと鳴り、焦点の合わない目から涙が溢れて落ちる。  龍嗣のものになって、中途半端にしか弓削に応えられない自分の狡さや醜さを、より一層思い知る。  自分を責めずに涙を吸い取ってくれた、そんな弓削の優しさが苦しかった…。

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