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 龍嗣を送り終えて帰ってきた運転手が、心得たように瑠維と猫を乗せて車を飛ばして行った。  住宅地の中、歩行者が少ないルートを選んだようだ。  同じ大学の付属高校にいるのだし、中等部と大学の研究棟ならば迷う事も無い筈。  万一、迷ったとしても、猫がついて行ったので大丈夫だろう。  璃音も深く寝入っているので、足早にキッチンに向かい、必要な物だけを手に取り再び璃音の元へ戻ると、弓削は備え付けられている冷蔵庫に収納した。 『…旦那様の口に入れずに取っておいて良かった…』  主に食べさせず、しっかり隠しておくあたり、弓削の優先順位が何処にあるのかが最近かなりおかしい。 「エロ魔神に食ワせるなんて勿体ないワよ。アナタが璃音と一緒に食べたらいいんじゃないの~?」と、猫が漏らした一言が、至極真っ当に聞こえてしまったのだ。 『ま…、いいか』  深く考えるのはやめにして、弓削は書類整理に勤しむ事にした。  龍嗣の香りに包まれて眠りながら、璃音はもう一つの香りに気がついた。  あまり自己主張はしないものの、甘やかな膚の香り…。 『弓削さん…?』  重い瞼は上がらず、手も足も怠くて動かない。  禁断症状で焦燥していた姿を思い出し、せめて手を握るだけでもしなければと思うのだが、指の一本も動かない。 『どうしよう…。』  眠りの波に飲まれそうになりながら、一生懸命手を伸ばそうとして、璃音はもがいた。 「ん………っ」  微かな声が聞こえ、弓削は璃音に目を向けた。  寝入ってから一時間近く経過しているが、顔が紅く染まり、息も少し浅い。 『熱が更に上がったのだろうか…?』  そう思い、少しだけ毛布を寄せてやると、毛布の下でもがいていた左手が、弓削の手に触れた。 『熱いな…』  いつも小さな子供並みに温かい手をしているが、今の璃音の手は、まるで燃えるように熱い。  パジャマも、汗でびっしょりになっている。  バスケットの中から着替え用のパジャマや下着、タオル等を引っ張り出してヘッドボードに置く。  洗面器に熱い湯を満たしてから、弓削は璃音のパジャマを脱がせた。  一度、軽く汗を拭き、次に熱い湯に浸して絞ったタオルで拭いてやり、冷却シートを貼り換える。  手早くパジャマを着せ、毛布でくるみ、ソファーに寝かせてシーツを交換した。

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