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弓削は璃音の体温が40℃を超えた事や、解熱剤の件などを白川医師のクリニックに連絡を入れ、往診の依頼をしておいた。
氷を少し溶かして角を無くしてから氷嚢に氷を入れ、ついでに丸い形で出来上がる製氷キットをいくつか戸棚から出し、水を入れて冷凍庫に収める。
急速冷凍に切り替え、キューブタイプの製氷皿も次々入れる。
氷嚢と水分補給ゼリー等をワゴンに乗せて龍嗣の部屋に戻ると、丁度龍嗣が璃音に毛布をかけているところだった。
「旦那様、氷嚢をお持ちいたしました」
「あ、ああ…、済まない」
額に一つと両腋に小さめの氷嚢を入れ、毛布をかける。
「腋の下のは、10分位で一度外します。
凍傷を起こしたら大変ですから…」
「ああ…」
ベッドサイドに座り、龍嗣は璃音の頬を撫でた。
朝方触れた時よりも、ずっと熱い頬に動揺が隠せないでいる。
「一応、クリニックに連絡をしておきましたので、診察が終わり次第往診に来て下さるとの事でした」
「…そ、そうか…」
中々この男が動揺している姿を拝む事は出来ないのだが、璃音が高熱になっただけでここまでうろたえるとは…。
意識がはっきりしていたなら璃音も驚くだろうなと、つい笑いそうになる。
「旦那様?」
「あ…、え…、う…?」
ぎくしゃくしながら振り向くと、頬も引き攣っていた。
「とりあえず、こちらにお座りくださいね?」
有無を言わさずソファーを薦め、座るように促す。
機械音が聞こえるようなギクシャクさで歩いて行き、龍嗣はソファーに座り、弓削はベッドサイドの椅子を持って行き、龍嗣の正面に背筋を伸ばして座った。
「旦那様」
「あ…、はい」
「今回の事は、明らかにやりすぎだとお気付きでございますね?」
「………はい」
しおしおとうなだれる龍嗣。
「二日間も責め立てたら、誰でも倒れます。
ましてや、成長が遅れた子供相手に…。
………文字通り嬲りまくってどうするんですか?」
「う………、はい…」
「元々体調を崩されてる事も、私は事前にお伝えもいたしましたね?」
「………はい」
「文字通り、抱き殺すおつもりでございますか?」
「い…、いや…」
どんどん龍嗣の顔が、紙のように白くなっていった。
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