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「八つ当たりへの仕返しは、ご本人にお返し下さい。  それを、大事な相手の璃音様に意識返しして、嬲りまくって挙げ句高熱でございますよ?  甘噛みした相手に、璃音様が逆らえないのを知った上での暴挙ですから、余計に質が悪いんです。  多分、お優しい璃音様の事ですから、熱が下がって意識が戻れば、簡単にあっさりと旦那様を赦しておしまいになるのは、この弓削、はっきりと予想できます。  旦那様の我が儘も、情に絆されて簡単に赦しておしまいになる筈。  しかし、しかしですよ?  その我が儘も、大概にして頂かないと、璃音様のお体が持ちません!!  場合によっては命に関わります!!  今後、同じ事をしたなら、十中八九、間違い無く、水上の本家の者が来て、璃音様を引き取ろうとするでしょう。  今は、甘噛みした相手だからと、璃音様を致し方なく旦那様のお手元に置いているだけであって、体調を崩すような抱き方や扱いをすると分かれば、問答無用で連れて行かれますからね?  元々、男癖も女癖も悪い旦那様に対して、水上の一族は評価を厳しくしている節もあるのですから、自重して頂きませんと。  聞いてらっしゃいますか?旦那様」  蛇に睨まれた蛙の如く、小さく小さく縮こまる龍嗣。  ソファーに浅く座り、ひたすら恐縮している。 「………はい、すいません。  聞いてます…」 「今回の事は、瑠維様と旦那様、両方にペナルティーが必要かと思いますので、お二人で璃音様に後日、しっっっっっかりと埋め合わせをして差し上げてくださいね?」 「は、はい…」 「分かって頂ければ、それで宜しいです…。  では、終わります」  まるで、婿殿を窘める姑のごとき諭しで龍嗣をたたきのめした弓削は、キラリと光る眼鏡を直し、唇だけで笑うと説教を終えた。  説教に費やした時間は、およそ5分。  スタスタとベッドに歩み寄り、璃音の両腋に入れた氷嚢を抜き取ると、水滴を拭き取り、冷却シートを貼った。  璃音の胸元に散らばる紅い模様を見ても、顔色一つ変えずにパジャマの衿元を直し、再び毛布をかける。  心なしか、顔色が良くなったような気もするが、依然熱は高い。  伏せられた睫毛も、涙の雫がついていて、ややもすると少女にすら見えなくもない…。  落ち窪んだ目元を拭ってやり、弓削はため息をついた。

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