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「君に頼みたいのは、この子の事なんだが…」
「ああ、弓削さんが連絡を下さった子供さんの事ですね?
クリニックに搬送するんですか?」
「いや、その…、搬送せずに済ませたいんだ。
それで、璃音くんというんだが…、この子の症状が落ち着くまでの間、経過を診てやって欲しいんだ…」
微妙に口ごもりながら、白川が説明する。
「…と、言うことは、泊まり込み…ですね?」
「そうなんだ…」
「いいですよ?
特に予定も無いですし、小児科研修中ですから丁度良いかもしれませんね。
まだ小学生でしょう? 10歳位ですか?」
「いや、これでも15歳なんだが…」
「……は?」
「家系的なものでして、璃音様は身体の成長が少し遅いんです。
それ以外は普通の15歳の子供と変わりませんが…」
弓削のさりげない説明を、小鳥遊は暫く考える。
「家系的なものですか…。
まあ、そこは深く考えない事にさせて頂きます。
経過観察とバイタルチェックを中心にしますが、明らかに悪化しそうな時は、時間の関係なく白川先生に連絡します。
先生、それで宜しいですか?」
「ああ。
クリニックの部屋も一応空けておく。
後で、君の着替え等も届けさせるから、このまま居てくれるかい?」
「ええ」
「それと、これが一番重要なんだが…」
毛布を少しずらし、璃音の衿元を示す。
「いろいろ思う事もあるかも知れないが…」
「…他言無用ですね?
患者さんのプライバシーを守るのも仕事の内ですから、守秘義務は守りますよ」
一瞬眉をひそめてから、小鳥遊は請け合った。
「ありがとうございます。
では、私と小鳥遊先生で打ち合わせをしようと思いますので、旦那様と白川先生は、リビングの方でお休み頂けますか?
お茶の準備もさせますので…」
有無を言わせず、龍嗣と白川医師をリビングに追いやり、弓削はさりげなくドアに施錠した。
「…では、打ち合わせを致しましょうか、小鳥遊先生?」
「玲でいい。
それより、ここまでがっつかれてるなんて聞いてないぞ?」
「面目ないです」
「お前が付いていながら、有り得ないだろ、忍。
あの男が璃音の番いの相手か?
かなり嬲ってくれたようだが…。
一発ぶん殴るか?」
小鳥遊は、額に脈を浮かせ呻くように呟いた。
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