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「着替えや食材等は、もう既に手配済みでございますので、海と山どちらの別宅になさいますか?
適当で良いなら、私が勝手にチョイスいたしますが…」
「………山だな…」
「畏まりました。では、そのように…」
弓削はすかさずメールで指令を出した。
程なくして「発送完了です。」と返信が来る。
「一つ聞いていいか?
何故別宅なんだ…?」
「璃音様の啼き声で、使用人達の仕事を停滞させない為…でしょうか」
「……………は?」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする龍嗣。
「まあ、杞憂で終わる事を祈ります。
すぐに戻る可能性が大きいので、キリキリ働いてくださいね?」
弓削は氷室重工本社に向けて、車をスタートさせた。
一方、中学部で課題を担任に渡し終えた璃音は、ニコニコ上機嫌のままで教室にいた。
いつも機嫌良く人あしらいも穏やか璃音だが、微妙に艶っぽいので、クラスメート達は課題の進みあぐねている部分を聞こうにも聞けないでいる。
「なあ、璃音…?」
「ん…?なあに?」
「具合、大丈夫なのか?
なんか今日のお前、変だぞ?」
隣の席の省吾が、妙に艶っぽい璃音に当惑しながら声をかけた。
「別に、何もないけど…。
そういえば、兄さんも龍嗣も、秘書の弓削さんも、今朝、凄くおかしかったんだよ?
話しかけても固まってるし」
「いや、変なのお前だろ?」と、突っ込みたいのを抑え、省吾はあまりつつかない方がいいんじゃないかという結論に至った。
教壇に立つ担任も、休む前と全く違う璃音の様子に当惑していた。
『な…、何なんだ、あの異様な艶っぽさは…!?
子供子供して、クラス一の癒し系だったのに、いきなりフェロモン全開って、どういう事なんだ!?』
ざわつく教室の外、硝子窓の向こうでは、学年主任と教頭も様子を伺っている。
「どうしたんでしょうねぇ…。
休み明けに、あんな状態だなんて…。
子供子供している生徒ですが、恋患いか何かでしょうかね…」
「顔も微妙に赤いから、まだ熱があるんでしょうか…?
一応、医務室に移動させますか…?」
「それがいいかも知れないですね。
担任にも、他の生徒の心臓にも良くないですからね…」
教頭と学年主任は、璃音を医務室に移動させる事にした。
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