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RRR… RRR…
弓削の携帯電話が鳴った。
表示を見ると中等部の担任だ。
「もしもし…」
『もしもし?私、水上璃音君の担任の日下部と申しますが…』
『やはり』
弓削は手帳を閉じ、足早にガレージに向かいながら応対する。
弓削が危惧していた通り、駄々漏れ状態の璃音は医務室に連れて行かれた後に高熱を出した。
高熱で紅潮した顔を見て、医務室にいた他の生徒や保健医までが「体調を崩した」ので、迎えに来て欲しいと言うのだ。
要は、璃音の駄々漏れの色香に触発されて発情してしまったという事だろう。
廊下に控えていた猫が、大学の部屋に常駐させてある大型のメカ…実物大の黒豹を起動し、璃音を大学の部屋に運ばせたようだ。
法規に違反しない程度にスピードを上げ、弓削は有無を言わさずリアシートに放り込んだ龍嗣に、手短かに説明する。
「旦那様、璃音様の艶っぽさの原因が分かりました」
「…何だったんだ?」
「単刀直入に申し上げれば、発情ですね」
「………はぁっ?」
璃音に最も似合わない言葉を聞き、龍嗣は思考が停止する。
「ああ、発情というより、禁断症状と言った方が早いかもしれません。
水上の執着癖の中に禁断症状というのがありまして、求愛した相手に触れる時間が減ったりして焦れ焦れすると、凶暴になったり、発熱したりするんです」
「………?」
「二日ばかり、旦那様から濃密過ぎる抱き方をされて、その後寝込まれたので、旦那様の肌恋しさに熱を出されたようです。
璃音様ご自身初めての事なので、自覚もないままフェロモンを振り撒いてしまい、医務室で保健医と生徒が"体調を崩した"…。
平たく言えば、璃音様の熱に当てられて発情しかけたようです」
「…な、なんだそれは…っ」
「事態を危惧した猫が大学の部屋の方に誘導したそうなので、私が迎えに行きます」
「私じゃマズイのか?」
「ええ。
旦那様の手が触れただけで可愛く啼いてしまうと思いますので、後々面倒な事になりかねません。
私は今の璃音様にとって発情対象ではありませんので、急いで運んで参ります。
一応、睡眠導入剤を飲ませますが、効きが悪かった場合は是非ともがっついて差し上げて下さい。
では」
大学の駐車場に乱暴に停車すると、弓削は陸上選手のような速さで駆けて行った。
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