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 運転席と助手席側の窓を全開にし、空気を入れ換える。  ついでに携帯ボンベから、ガス状の薬を吸った。 「何よ、それ…」 「水上の者が発情した時に出すフェロモンを中和するガスです。  慌てていたので、持って行くのを忘れてしまって…」  助手席に器用に座る猫が、ため息をつく。 「よくまあ、そのガス無しであの濃いフェロモンに耐えたワよ」  苦々しい顔をして猫が後ろを振り返ると、リアシートの龍嗣がコートごと璃音を抱きしめて固まっているのが目に入った。  とく…、とく…、とく…。  聞き慣れた鼓動が耳を打ち、璃音は耳を龍嗣の胸に擦り寄せた。  龍嗣の肌の香りに包まれて、一旦落ち着いた呼吸が乱れはじめ、体の中心を駆け上がる熱くて甘い痺れが璃音を狂わせる。  ………欲しい。  龍嗣が欲しくて堪らない。  脳髄まで灼き尽くすように、甘やかな愛撫で蕩けたい…。  龍嗣のアレで、奥まで貫かれたい…。  あの時みたいに、激しく抱かれたい…。  自分の不注意で、小鳥遊に体を奪われかけたから、龍嗣に罰してほしい…。  ドクドクと、心臓が早鐘を打つように鼓動がどんどん早くなる。  いつもは無意識の奥底にある筈の情欲が、龍嗣欲しさに璃音を呪縛した…。  唇を塞いで…。  体中を愛撫して…。  貫いて…。  突いて…。  罰して…。  お願い…。 「龍嗣…僕を…罰して…」  甘い吐息混じりの懇願が龍嗣の耳を打ち、程よく筋肉のついた腕で、璃音をきつくきつく抱きしめた。 「璃音…?」  コートをめくると、龍嗣にペッタリと張り付くように璃音が龍嗣の胸元に耳を寄せている。  俯き加減の顔がほんの少し上を向き、熱に蕩ける表情が見えた。 「………っ!?」  いつもの顔とも違う。  激しく抱いている時の顔とも違う。  今朝の艶っぽい顔とも違う。  情欲に染まり、龍嗣を欲する淫らな貌(かお)…。  堪らず、龍嗣は璃音の唇を塞いだ。 「ん…っ」  どこまでも甘く柔らかな唇を割り、歯列を舌でなぞると、それに応えるように舌が差し出された。  チュク…、チュク、チュク…。  お互いの舌を吸い合い、存分に絡ませ、深く深く口づける。 「ん……っ、ふ……ぅ、んんッ…」  何度も、何度も、何度も角度を変えて、強く、弱く、舌を絡ませ、唇を重ねた。

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