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璃音の意識が落ちる所にタイミングを合わせたように、弓削は車を別邸の前に横付けした。
「旦那様、到着でございます」
恭しくドアを開け、足元に落ちていたコートの埃を払うと璃音の背中にかける。
弓削はコートでくるんでから璃音を受けとった。
「一応、防音の利いた部屋に寝具等を整えてございますので、そちらにお願い致します」
「分かった…」
龍嗣は何となくいたたまれなくて、先にバスルームに向かった。
弓削は、コートに包まれた璃音を先に部屋へと運んで行くようだ。
温めの湯が張られた浴槽に浸かると、深くため息をつく。
車内での璃音の乱れっぷりに、自分が嬲ったのが原因なのだと自己嫌悪に陥る。
いつもは自分が誘うし、自分が煽りたてないと乱れないのに、コートの中にいた璃音は既に淫らさを全開にしてしまっていた。
文字通り、発情したかのように…。
瑠維に邪魔された腹いせに嬲った事が、ここまで転がってしまってかなり堪えた。
ゆったり時間をかけて浴槽に浸かったあと、ラフなワイシャツとチノパンに着替え、弓削に言われた部屋に向かう。
オーディオルームに運び込まれたベッドの上に、璃音は寝かされていた。
「あいつ、何を考えたんだ…?」
ベッドの上に横たわる璃音は、白い絹の着物を着せられている。
それがまた、艶やかな黒髪に似合っているのが余計に腹が立つ。
眠ったままの璃音が着た訳ではないので、どう考えても弓削しかいない。
サイドテーブルに乗せられたメモには、生真面目な弓削らしい文面が並んでいた。
『ただ今、本宅の旦那様のお部屋を、万一の為に備えて防音工事をさせておりまして、使える状態ではございません。
ご不便をおかけしまして申し訳ございませんが、週末はこの別邸でお過ごし下さい。
尚、私は端の部屋に控えておりますので、ご用の際は何時でもお申し付け下さい。
追伸
璃音様のお召し物は、お気に召して頂けましたでしょうか?
可憐な容貌にピッタリだと思いましたので、用意させて頂きました。
意外と萌えるのではないかと思います…』
「も………、萌え?」
この着物を用意している時の弓削のしたり顔が、何となく目に浮かぶ。
確かに、どんな色の着物より、楚々とした純白の着物が似合う気がした…。
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