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 ずっと熱っぽかった璃音は、少し熱が下がったようだ。  車の中では真っ赤だった顔も、幾分冷めたような感じがする。  額や腋の下に貼られた冷却シートを剥がし、着物を元に戻すと、龍嗣は璃音に毛布をかけた。 「ん………?」  瞼が動き、闇色の目がボンヤリと龍嗣を捉える。 「………気が付いたか?」  ベッドの端に座り、璃音の前髪を梳くと、指に馴染んだしっとりとした感触が気持ち良い。 「りょう…じ…?」  とろんとした目で見つめる璃音は、前髪を梳く龍嗣の手を掴み、自分の頬にくっつける。  滑らかな肌に頬擦りされて、龍嗣は心臓が鷲掴みされたような気がした。  璃音の頬も、指も、肌も、全部が滑らかで、何時までも触れていたいと思えるような感触で、この一年足らずの間に、龍嗣の全身が覚えた肌だった。  璃音にとっても、龍嗣の指や唇、舌や肌は、全身に刷り込まれた感触の筈だ。  愛おしくて、いつまでも触れていたいと思う。  魂までも搦め捕り、腕の中に抱きこんで、誰にも触れさせたくない位にのめり込む自分。  いっそ深く深く繋がったまま、一つに溶け合わさってしまえたらと、何度思ったろう…。 「龍嗣………」  あの夜から掠れたままの声が、薄紅の唇から零れる。 「…傍に、行っていい…?」 「あ、ああ…」  慌てて頷くと、璃音が起き上がって四つん這いで龍嗣に近寄る。 「………あ…っ」  着物の裾を膝で踏み、つんのめりかけたところを捉えると、甘い香りが鼻腔を擽った。  ふわりと抱きよせて膝の上に乗せると、胸に頬を擦り寄せ璃音はほうっと息をつく。  半ば、うっとりとした表情をする璃音の顔を、上向かせて静かに唇を重ねると、大人しくされるがままになっている。  いつものような、激しく舌を絡ませるようなものではなく、穏やかに唇を重ねただけなのに、それだけで血液が沸騰して、逆流しそうな程だ。  微かに、璃音の唇が啄むように動いた瞬間、龍嗣の箍が外れた。  奪うように深く口づけ、角度を変えて何度も啄む。  怖ず怖ずと応えるように璃音が舌を差し出すと、淫らな水音を立てながら、龍嗣は舌を絡めた。 「「ん……、は…ぁっ、んん…」」  互いの絡まる舌と、合間に零れる声混じりの吐息が、少しずつ理性を侵食していく。  燻っていた欲望に着いた火が、二人を煽りたて始めた。

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