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今まで踏ん切りがつかないまま持っていた指輪を、ようやく璃音の指に嵌める事が出来た。
ホッとした半面、余りの恥ずかしさに、頭の中が煮えそうになる。
背中にビッシリとかいた汗で、ワイシャツが冷たい。
その背中に手を回した璃音が、驚いて唇を離した。
「龍嗣、どうしたの?背中が凄い事になってる…」
「あ?ああ…、余りに必死だったから…、その…、な?
指輪を渡す時の台詞をどうしようかって…、"そんな趣味の悪い指輪貰えるか"って、きっと断られると思った…から…」
穏やかな表情で耳を傾ける璃音。
「断る理由が無いでしょ。
まんまプロポーズみたいな言葉と一緒に出されて、嬉しくない訳ないもの」
ニッコリ微笑み、あやすように背中を軽く叩く。
それだけでもバクバクと心臓が跳ねまくる辺り、完全に璃音に落とされた感じがした。
「あ…っ!? 何してんだ、璃音っ??」
龍嗣のワイシャツの釦を、璃音が外し始める。
「何って、汗拭いてあげるだけだよ?
龍嗣、風邪引いたら嫌だし」
キョトンとして見上げる顔は無邪気そのもので、淫らさの欠片もない。
なのに、釦を外す様を見ていると、どうにも艶っぽい事を想像してしまう。
胸板に前髪がフワリと触れ、背筋にゾクリと走るものがあった。
「ふ………ぁっ!?」
上体が一瞬反り、璃音が驚く。
「え、えええっ!? 何で?」
前髪が触れた事に気付かない璃音は、訳が解らない。
何か自分の手元が良くなかったのかと、慎重に釦を外し、汗で張り付いたワイシャツをゆっくり剥がそうとする手を掴み、龍嗣は璃音を引き寄せた。
「ちょっと、龍嗣……っ、んっ、んんん…っ?」
浅く、何度か啄む龍嗣の唇に、璃音は怖ず怖ずと啄み返す。
「ここまで…、夢中に…なる…なんて…な…。
責任…取れよ…」
途切れ途切れの声に、璃音の手が龍嗣の両頬を挟むように触れる。
気遣う様に返していた啄みを深く激しいものに変え、少しでも龍嗣が悦ぶような口づけをしようと、璃音が舌を存分に絡ませると、龍嗣は璃音の着物の帯を解いていく。
夢中で口づけている内に、衣擦れの音と共に着物が足元へと滑り落ち、自然に体から力が抜けてしまった璃音は、龍嗣の腕に抱えられたままベッドに横たえられた。
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