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 同じ頃…。  突然鳴り響いたオルゴール音に、弓削は一瞬ぎょっとした。  璃音のブレザーに入っていた携帯を取り出すと、[着信・瑠維]と表示されている。  仲の良い兄からの着信なのに、メロディーに違和感を覚える弓削。  何故なら、[死の舞踏]という曲だったからだ。  訝しんでいるうちに着信が一度切れ、もう一度鳴る。  やはり、[死の舞踏]だ。 「もしもし…」 『もしもしっ!!璃音っ!?お前、今、何処にいるんだよっ!?』  苛々しながら怒鳴る声は、紛れも無く瑠維だ。  内心、動揺が隠せないまま、弓削は口を開く。 「申し訳ありません、瑠維様。  璃音様は、登校されてすぐに体調を崩されまして、ただ今臥せていらっしゃいます」 『な……っ、なんでアンタが応対すんだよ!!  璃音が具合悪いって言うなら、今、何処にいるんだよ!!』 「数ある別邸のうちの一つです。  本宅は、旦那様の寝室を改装中で騒々しいので、璃音様がゆっくりお休みになれませんから」 「ただいま、旦那様に抱かれて、存分に啼いてらっしゃいます」などと言えば、瑠維は完全に切れてしまうだろうから、敢えて真実はぼかした。 『俺に何も言わずに、あちこち連れ回すな!!  つか、身内の俺が看病するのが普通だろ!?』 「大変申し訳ございません。  緊急事態でございましたので、致し方なかったのです。  璃音様は熱が振り返しておりますので、未だお電話に出る事も難しいかと思われます」  電話の向こうでぎゃんぎゃん吠える瑠維に辟易しつつも、弓削は丁寧に受け答えをした。 「それに、臥せておいでの璃音様の枕元で、旦那様と瑠維様が鉢合わせとなりますと、璃音様がゆっくりお休みになれませんので、週末はこちらで療養という事にさせて頂きたいと存じます」 『な………っ、そんな勝手に決めるんじゃねえっつの!!  アンタ、わざと改装工事入れただろ!?』 「いえいえ。  そんな権限は私にはございません。  単に、璃音様の可愛らしい声が漏れて、先日の二の舞にならないように工事を入れただけです。  幸い、月曜の夕方には仕上がるようですし、その時間に合わせて戻るつもりですから」 『ホントに熱なのかよ?  俺の目が無いのを良いことに、アイツに食わしてんじゃねえだろうな!?』  流石に、ヤキモチ焼きの兄だ。  しっかり読んでいる所が凄い。  弓削は感服しきりだった。

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