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「有り得ませんね。
先日の一件でかなり懲りたでしょうし、旦那様も流石に控えておいでですよ?
そんなに疑われるのでしたら、高熱で唸ってらっしゃる璃音様に代わりましょうか?
きっと、なんて疑い深い兄だと呆れられる事請け合いですがね」
余計なツッコミが入る前にズバズバ切り込む弓削に、瑠維も黙らずを得なかった。
「璃音様が落ち着かれましたら必ず連絡をするようお伝え致しますので、今日は聞き分けて頂けませんか?
私も、璃音様の氷嚢やらを作る為に抜けただけですので、すぐに戻らねばなりませんし」
「………………解った」
不承不承ながら、瑠維の了承を取り付け、弓削は素早く通話を切る。
ついでに、璃音、龍嗣、自分の携帯のGPS機能をオフにし、位置情報探知の拒否モードにした。
『多分、瑠維様が旦那様の滞在先を尋ねるかもしれないが、知らぬ存ぜぬを貫くように。
万一ばれてしまった場合、先日のように璃音様が嬲られると予想されるので、決して明かさないこと…云々…』と文面を書き、(元々屋敷にいる者達にはきつく口止めをしてあるのだが)改めて口止めの為にメールを送信しておく。
無垢で純真な璃音が、節操も堪え性もない龍嗣を、完全に篭絡したであろう事に、今更ながら感服する。
あんな男より、自分の方が何倍も璃音を幸せにするだけの自信があるが、璃音自身が禁断症状に陥ってまで欲しがったのは、紛れも無く龍嗣だけなので、少し癪だが受け入れるしかあるまい…。
弓削は、璃音に求愛した者達へもメールを作成した。
『璃音様が、求愛相手の氷室龍嗣を完全に篭絡したようです。
詳しくは明日、報告します。』
と、手短な文面で送信する。
全員から、事の真偽を問うメールが届き、龍嗣が意趣返しで嬲った夜の事、小鳥遊に食われかけたこと、数日寝込んだ事、そして、今朝の禁断症状の詳細を書き、文末には、『見事に全員、告白する前に失恋しましたね(苦笑)』と付け足して返信した。
今朝の艶っぽい表情や、薬を飲ませた際の唇の感触、何処までも甘かった吐息を思い出す。
深く繋がって、存分に璃音を啼かせる唯一の相手になりたかったが、この一年傍にいて、抱きしめたり、キスを交わせただけでも重畳だったのだと、自分に言い聞かせる弓削なのだった…。
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