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「欲情…する…?龍嗣が?」  広げた着物を手にしたまま、璃音が不思議そうな顔をする。  ただの白い着物を自分が着ただけで、龍嗣が嬉しい意味も判らない。  大体、白い着物なんて、幽霊のイメージしかないので、璃音には理解出来ないのだ。 「白い着物なんて幽霊くらいしか着ないよ…?」 「いや、この間、時代劇見ただろ?  夜に白い着物を着て寝てたじゃないか」 「………あぁ…、そう言えばそっか」  何となく合点がいったらしい璃音に着物を羽織らせ、龍嗣は右前に帯の結び目を作った。  本来は女性用の結び方に近いが、それが一番似合っている。 「僕も手伝うよ。  確か、こんなだったよね…?」  璃音も龍嗣が羽織った着物の袷(あわせ)をピシッと直し、帯を結んだ。  記憶を頼りに、腰側に結び目を作る。 「「…………………」」  お互いの出来上がりを見て、暫し考えてみる。 「………?」  着物を着こなす龍嗣の姿に、璃音が「成る程」と頷いてクスクス笑った。 「ホントだ…。  何だか龍嗣、凄くえっちい」 「感心するとこはそこか…?」  ガックリ膝をつく龍嗣。 「だって、湯上がりで髪も生乾きだし、肌が上気してて、何だかやらしい感じがするもん」 「君だって、エロ可愛さを駄々漏れにしてるぞ…?」 「………はい?」  振り返って鏡を見るが、璃音には意味が判らない。 「エロ可愛いって………何?良くわかんないよ…」 「髪が生乾きで首筋とかに張り付いてて、肌がピンクに上気してて、目も潤んでるから、エロ可愛いけどな…」  背中側から腕を回し、璃音を抱きしめる。 「何だか良く判らない…」  しげしげと鏡を覗く璃音の顔を上向かせると、龍嗣は額に口づけを落とした。 「自分の事は、誰もが一番判らないものだよ…?」 「ひ……ぁっ!!」  脇から手を入れ、璃音の胸の蕾を摘む。  指の腹で捏ねられ、やわやわと躯の芯に残る熱に火がつけられていく。  璃音の顎を掴み、鏡を通して視線を合わせる。 「ほぅら…。  鏡に映る君は、とても淫らで可愛いだろ…?」 「……あっ、やぁあ……っ!!」  キュッと蕾を抓られて、璃音の力が抜けていく。  鏡に映る璃音の顔は、駆け上がる甘い疼きに歪み、瞳が潤んで蕩けていて、燻っていた龍嗣の情欲を煽りたてていた。

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