116 / 454
・
ギシ…ッ
龍嗣の甘い口づけで、璃音の心と体が軋む。
どこまでも甘くて、自分の理性を剥ぎ取って行くキスが、躯を繋ぐ行為より璃音は好きだ。
いつも龍嗣の唇と舌は、自分を蕩けさせてくれるから。
唇を重ねていると、胸の中に龍嗣への想いが溢れて、幸せな気持ちになれる。
躯を繋いでしまうと、頭の中がぐずぐすに溶けて、龍嗣の背中に掴まるしか出来なくなっていき、口から漏れるのは鳴き声だけになってしまう。
勿論、お互いの躯を繋いで、龍嗣に啼かされている間も、龍嗣の深い愛情をたっぷり注がれているようで好きだけれど…。
自分は何時も受け身だから、龍嗣に愛情を存分に注げる行為は、やっぱりキスだと思う。
なのに、今は。
龍嗣の手と唇と舌で喘がされ、体中が溶けてしまった様に、思うようにならない。
びくびく震える体を持て余し、もどかしさでどうにかなりそうなのに、薄目を開けて見た龍嗣はこの上もなく嬉しそうな顔をしている。
「ん…っ、んんんっ」
上顎や舌の裏までなぞられて、体の芯から蕩けていく。
舌を絡めて龍嗣を悦ばせたいのに、自分の舌すらも自由にならない。
抱きしめられたまま、甘い吐息と鼻に抜ける声を漏らすしか出来なくて、何ひとつ返せない自分が悲しくなり、璃音は無意識に涙を零した。
ひくんっ。
全身を苛む熱を持て余すのとは違う、吃逆にも似た璃音の躯のひくつきに、龍嗣が唇を離した。
「璃音…っ、どうした?」
はらはらと零れる涙を見て、珍しく龍嗣もうろたえる。
「すまん、嫌だったか…?」
気遣う様に覗き込む龍嗣の胸に顔を擦り寄せ、何度も璃音はかぶりを振った。
「…やじゃ…ない…」
掠れた声が鼻にかかって、涙も次々零れ落ちる。
「璃音…?」
「嫌じゃ…ない…。
龍嗣のキスが…気持ち良すぎて、何にも出来ない自分が…、龍嗣を気持ち良くしてあげられない自分が嫌になっただけ…」
「……っ」
快楽に翻弄されながらも、龍嗣を悦ばせたくて、なのに思うようにならない哀しさに泣く璃音が、龍嗣は堪らなく愛おしいと思った。
「気持ち良くなければ、君の口の中に舌を入れたりしないし、絡ませもしない。
璃音の唇も、舌も、何時だって私の理性を簡単に吹き飛ばす位、淫らに蕩けて気持ち良いんだぞ…?」
龍嗣は、璃音の唇を愛しげに舌先で舐めた。
ともだちにシェアしよう!