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 ギシ…ッ  龍嗣の甘い口づけで、璃音の心と体が軋む。  どこまでも甘くて、自分の理性を剥ぎ取って行くキスが、躯を繋ぐ行為より璃音は好きだ。  いつも龍嗣の唇と舌は、自分を蕩けさせてくれるから。  唇を重ねていると、胸の中に龍嗣への想いが溢れて、幸せな気持ちになれる。  躯を繋いでしまうと、頭の中がぐずぐすに溶けて、龍嗣の背中に掴まるしか出来なくなっていき、口から漏れるのは鳴き声だけになってしまう。  勿論、お互いの躯を繋いで、龍嗣に啼かされている間も、龍嗣の深い愛情をたっぷり注がれているようで好きだけれど…。  自分は何時も受け身だから、龍嗣に愛情を存分に注げる行為は、やっぱりキスだと思う。  なのに、今は。  龍嗣の手と唇と舌で喘がされ、体中が溶けてしまった様に、思うようにならない。  びくびく震える体を持て余し、もどかしさでどうにかなりそうなのに、薄目を開けて見た龍嗣はこの上もなく嬉しそうな顔をしている。 「ん…っ、んんんっ」  上顎や舌の裏までなぞられて、体の芯から蕩けていく。  舌を絡めて龍嗣を悦ばせたいのに、自分の舌すらも自由にならない。  抱きしめられたまま、甘い吐息と鼻に抜ける声を漏らすしか出来なくて、何ひとつ返せない自分が悲しくなり、璃音は無意識に涙を零した。  ひくんっ。  全身を苛む熱を持て余すのとは違う、吃逆にも似た璃音の躯のひくつきに、龍嗣が唇を離した。 「璃音…っ、どうした?」  はらはらと零れる涙を見て、珍しく龍嗣もうろたえる。 「すまん、嫌だったか…?」  気遣う様に覗き込む龍嗣の胸に顔を擦り寄せ、何度も璃音はかぶりを振った。 「…やじゃ…ない…」  掠れた声が鼻にかかって、涙も次々零れ落ちる。 「璃音…?」 「嫌じゃ…ない…。  龍嗣のキスが…気持ち良すぎて、何にも出来ない自分が…、龍嗣を気持ち良くしてあげられない自分が嫌になっただけ…」 「……っ」  快楽に翻弄されながらも、龍嗣を悦ばせたくて、なのに思うようにならない哀しさに泣く璃音が、龍嗣は堪らなく愛おしいと思った。 「気持ち良くなければ、君の口の中に舌を入れたりしないし、絡ませもしない。  璃音の唇も、舌も、何時だって私の理性を簡単に吹き飛ばす位、淫らに蕩けて気持ち良いんだぞ…?」  龍嗣は、璃音の唇を愛しげに舌先で舐めた。

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