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 龍嗣に璃音が再び啼かされ、存分に蕩けさせられた後…  深夜の別邸のチャイムが鳴った。 「………チッ、  思ったより早く嗅ぎ付けやがりましたね」  別邸の端の書斎にいた弓削は、忌ま忌ましいとばかりに舌打ちをした。  窓の外には氷室家の自家用車があり、玄関に立っている影はどう見ても…。 「直情バカ初号機ですか…」  璃音の兄、瑠維だった。 「ただ今参りますので、少々お待ち下さい」  インターホン越しに返事をし、急いでオーディオルームに向かう。 「旦那様、失礼いたします…」  恐る恐る声をかけると、まどろんでいた龍嗣が顔を上げた。 「申し訳ありません、直情バカ…いえ、瑠維様がここを嗅ぎ付けられたようです」 「………」  一瞬表情を変えたが、龍嗣は徐に起き上がる。 「よく嗅ぎ付けたもんだな…」 「とりあえず、書斎かリビングに通しておきますので、南側のゲストルームに移動して頂けますか?  ついでにお二人ともパジャマに着替えて頂ければと思います。  多少は時間稼ぎが出来ると思いますが、手早くして頂けますと助かります」 「………解った。  移動ついでに、ここの鍵もかけておくか?」 「そうですね…。  かなり旦那様ががっついたのがありありと判る状態ですから、かなりまずいでしょうね…。  お願い致します」  恭しく、且つ俊敏に弓削が玄関に向かった。 「………で?」 「どうされました?瑠維様?」  龍嗣が璃音をゲストルームに移したり、着替えたりしていて焦る内心を欠片すらも表情に出さず、弓削は涼しい顔で紅茶を煎れている。 「だから、璃音の具合はどうなんだよっ!!  しかも、オッサンも中々来ねえしっ!!」  苛々を満面に湛え、瑠維がギャンギャン吠える。 「ああ…、璃音様の熱も大分下がられた様で、一時間程前に深く眠られましたよ?  そんなに気になられるのでしたら、起こして差し上げましょうか?  また振り返しても責任は取れませんがね。  旦那様も、ここ数日業務が立て込んでらしたので、つられて寝入ってましたし…。  もうすぐこちらに来…」  カチャ…。  パジャマの上に薄手のニットを羽織った龍嗣が、リビングに入って来た。  弓削には、この上無い不機嫌な主の意趣返しの矛先が、璃音に向かないかだけが気掛かりだった…。

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