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「璃音っ、お前、体は大丈夫なのかっ!?」  瑠維が璃音に駆け寄り、肩を掴む。 「………」  全く反応を返さない璃音。 「………璃音?」  俯き加減の璃音の顔を覗き込んだ瑠維が固まっている。 「お前…もしかして……寝ぼけてんの…?」  ゆらゆら立っている璃音は、眠ったままだった。 「………や…っ」  肩を揺さ振る瑠維の手からスルリと逃れると、フラフラと龍嗣の方向に歩いていく。  薄目を開けているものの、視界には何も捉えていない筈なのに、器用にもテーブルや椅子、弓削の事も避けて歩いていくので、瑠維は弟の行動に絶句している。  千鳥足とも違うが、ゆらゆらと歩く様は夢遊病患者にも見えた。  くんっ。  龍嗣の袖を指で掴み、軽く引く。  座ったまま動かない龍嗣に、目許を歪める璃音。 「どうした?眠れないのか?」  静かに声をかけると、ゆっくりと龍嗣の肩に手をかけ、膝に乗った。 「璃音…?」  龍嗣の脚に跨がり、向かい合わせで座ると、右の耳を広い胸に当てる。 「龍嗣…?」  とろんとした目の璃音が、龍嗣を見上げた。 「ん?目が覚めたのか?」  額と額を合わせてぐりぐりすると、後ろで見ていた瑠維の額に一際太い血管が浮いた。 『………そこらのバカップルみたいにベタベタしてんじゃねぇよ…っ!!』  無意識にギリギリ歯軋りしていたようで、弓削が肩を叩いた。 「瑠維様…堪えてくださいね?」  苦笑いして、苺を盛った皿を差し出す弓削。 「いつの間に盛ってんだよ…」  璃音以上に気配を読みにくい男だと、内心舌打ちをする。 「…いちご…?」  ぼうっとしたままの璃音が、瑠維の手に乗った皿を見詰めていた。 「つきひめ…」 「香りだけで当てるのはお前だけだな。  ほら、食いなよ」  目の前に置かれた皿に手を伸ばし、一粒口にする。 「おいしい…」  にこっ、と笑う璃音の顔に、瑠維も弓削もクラリとよろめいた。 「これは何て言う名前なんですか?」  弓削が少し大きめの粒を渡すと、 「あまあまだいおう…」  ウキウキしながら受け取る。 「そうなんですか、瑠維様?」 「多分。  こいつ、大好物は離れた所からでも嗅ぎ分ける」 「い、犬並みですか…?」  璃音は、次々渡される苺の品種を当てまくっていた。

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