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「はい」
にこっと笑い、大粒の苺を瑠維に手渡す璃音。
「瑠維、あまおとめ好きでしょ?」
「お、おう…」
うろたえながらも瑠維が受け取ると、
「璃音様、私は月姫が欲しいですねぇ…」
今度も迷うことなく、艶々した数粒を弓削に手渡す。
「はい」
「有難うございます」
口に含むと、溶けそうな甘さと程よい酸味が広がった。
「美味しいですねぇ」
瑠維と弓削がモゴモゴ口を動かしている間に、璃音は一際大きい…林檎程もある一粒を龍嗣に差し出す。
「ん?」
「龍嗣もたべて…」
弓削や瑠維に渡したのと違い、龍嗣には口元に運んでいる。
「これは何て言う名前の苺なんだ?」
「花桃…」
一口かじると、バランスの取れた甘さと酸味が口いっぱいに広がり、豊潤な香りが鼻に抜けた。
「これは…、本当に苺なのか?」
「あっ、お前、それは自分で食えよ!!
なんでオッサンに食わしてんだ!!」
ニコニコ上機嫌の璃音に、憤慨する瑠維。
「美味しい?」
「信じられない位美味しいな、これ…」
龍嗣の言葉に、ますます機嫌が良くなった璃音は、龍嗣に苺をかじらせた。
「旦那様、一粒一万円の馬鹿高い苺ですよ、それ…」
「ひ、一粒…一万円!?」
驚愕の値段に、龍嗣が目を剥く。
「まだ旬には早いから、ちょっと高いんだよ。
ホントの出回りの時期なら、半額以下なんだけど」
璃音に選んで貰った苺を口に放り込みながら、瑠維が苦笑いした。
「一年に一回だけの酔狂だぞって、母さんがこいつに食わしてたんだ。
確かに美味いけどさ」
「そんなのを私に食べさせたのか…?」
「半分こ…」
残った半分(それでも普通の苺の大きさより遥かに大きい)を口に運び、璃音は満足げに食べている。
「もう一個、瑠維と弓削さん…」
苺の山の中から巨大な一粒を掘り出し、璃音は瑠維に手渡す。
「いいのかよ…?」
「うん。
一年に一回だけのだから、皆でたべよう?」
かなり大きい一粒を、弓削が果物ナイフで切り分けて瑠維に差し出す。
瑠維と弓削がゆっくりかじると、バランスの取れた甘さと酸味が口いっぱいに広がり、豊潤な香りが鼻に抜けていく。
「これは、苺の常識を外れた美味しさですねぇ。
ご相伴に預かれて幸せです」
美味しい苺を皆で味わい、満足顔の璃音なのだった。
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