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「これも、中々美味いな…。
璃音、食べてみるかい?」
濃い紅色のつやつやした粒を龍嗣が差し出すと、璃音が頷いた。
「たべる…」
親鳥に餌をねだる雛鳥のように、口を開けた。
「どうぞ」
口の中に入れてやると、ニコニコしながら頬張る。
「美味しい…。龍嗣もたべる?」
弓削が堪能した月姫を璃音から口に入れて貰い、龍嗣も益々上機嫌になる。
「璃音が選ぶのは、とびきり美味い気がするな…」
龍嗣が璃音の額に口づけを落とすと、瑠維が盛大にため息をついた。
「だから…、そこらのバカップルみたいな真似はヤメろっつの…。」
忌ま忌ましそうに顔をしかめながら、瑠維は苺を口にする。
「まあまあ、半分寝ぼけている璃音様も、中々見る機会もないですから、大目に見て差し上げてください。
それに…」
「それに?」
かくん…っ。
龍嗣の膝の上で、璃音の体が傾いだ。
「寝落ちの瞬間も、中々可愛らしいですからね…」
苺を数個食べて満足したのか、はたまた睡魔に負けたのか、璃音が眠りの淵に落ちていく。
睡魔に抗うように、一生懸命瞼が落ちるのを堪えながら、璃音は上体を捻った。
「るい…」
「ん?どうした、璃音?」
「いちご…ありがと…」
「お…、おう」
寝ぼけて、いつもより数段幼い言葉遣いで、しかも寝落ち直前の無防備な笑顔まで向けられ、瑠維は照れ臭くなった。
『畜生、やっぱ可愛いじゃねーかよ…』
にこぉっ、と、笑ったまま、膝の上で寝入った璃音を、龍嗣が自分に凭れ掛かけさせ、ゆっくり背中をさする。
むずがる子供をあやす様に、何度も何度も背中をさすっている内に、璃音の寝息は深く規則的に変わって行った。
すう… すう…
完全に寝入った璃音に弓削がハーフケットをかけてやると、更に深い寝息になっていく。
龍嗣は、立ち上がる前に「時期が早いのに、ここまで美味しいのは初めて食べたよ。本当に有難う」と、瑠維に声をかけてから、璃音をやんわりと抱き上げてリビングから出て行った。
「…べ……、別に、礼なんかいらねぇし…。
璃音に食わせたかったから買っただけだからなっ」
「私も思わぬ美味なフルーツを堪能できてラッキーです。
有難うございます」
唇を尖らせて下を見る瑠維に、弓削が新しく煎れたお茶を差し出した。
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