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軋む躰、軋む心
肌に馴染んだ香りが鼻孔を擽り、璃音は目覚めた。
何度も重ね合った愛しい男の肌の香りはざわついた璃音の気持ちを、この上もなく落ち着けてくれる。
逞しく、程よく筋肉のついた腕にギュッと抱きしめられたまま、璃音は動けない。
動く気もないが…。
昨夜、蜜嚢が空になるまで龍嗣に深く愛されて、怠さの残る体は重く、多分足腰も立たないだろうから…。
龍嗣の優しい肌の香りと体温にくるまれて、心地の好いまどろみに身をまかせていたい。
この腕の中に、ずっといたい。
龍嗣の無防備で規則正しい呼吸を聞いているのも好きだ。
時間の制約のない週末だから、彼が目覚めるまでの間、じっとしていようか…そう思っていると、
「ん………っ?」
龍嗣が身じろいだ。
そのまま璃音が眠った振りをしていると、そろそろと起き上がった龍嗣が璃音の前髪や額に触れる。
少しゴツゴツする指が、額をそうっと掠めていく。
その優しい感触が、璃音の体の芯に燻る熱を煽って行こうとする。
「んぅ………っ」
ピクンと反応してしまった璃音のこめかみに、柔らかなものが触れた。
「………?」
弾みで開けた目の前には、にこにこと上機嫌の龍嗣がいて、大きな手で璃音の髪を梳きながら、こめかみや頬、耳元等に口づけの雨を降らせてくる。
「龍嗣、おはよ…」
龍嗣の頬に手を伸ばすと、髭が指に当たりチクチクした。
「おはよう~、璃音」
「ひゃ…っ!!」
璃音の頬に、龍嗣が頬擦りをする。
「いっ、痛いよ…っ!!」
ジョリジョリという髭の感触に首を竦めていると、不意に唇が塞がれた。
「ん……?んん…っ」
軽く、何度も啄む唇につい応えてしまい、龍嗣の舌が唇を割って入ってくる。
じわじわと体内に燻る熱を呼び起こすように舌が絡み、璃音も一生懸命舌を差し出した。
蕩けそうな舌を龍嗣を喜ばせたい一心で絡めながら、璃音も深く唇を合わせていく。
お互いの唇が重なる音と、唇の端や鼻から漏れる吐息や、衣擦れの音だけが耳を打つ。
昨夜、散々啼かされたのに、まだ体中が龍嗣を求めてやまない。
優しく理性を剥ぎ取るように口づけられ、力が抜けた体が龍嗣に組み敷かれた。
「ん…んん…っ、ん…ふ…ぅっ」
龍嗣の体重を受け止めながら交わす口づけは、璃音を更に深く蕩けさせていく。
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