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 璃音の甘い香りが、瑠維を日々焦れさせて来ていたある冬の日…。  母は買い物の帰りに、瑠維と璃音を連れて実家に寄った。  鬼より怖い荊櫻の子供………瑠維と璃音の二人に会いに来た親戚たちは、ざわついた。  将来の伴侶選びに入っていた一部の子供たちを、瑠維と璃音が発情させてしまったのだから。  特に、璃音の体から立ち上る香りはどこまでも甘く、頭の中を痺れさせた。  まだ、寝返りもままならない璃音から漂う甘い香りが、自分だけでなく他の子供をも誘っている事に、瑠維は幼いながらもショックを受けた。  しかも、零れ聞いた話は、更に奈落の底に突き落とす事になる。 「瑠維と璃音の相性がかなりよさ気だけど、兄弟は秘密の結婚は出来ないから安心だよね」  …と、従兄弟達が話していたのだ。  他の子供達は璃音と「つがい」になれるのに、自分だけはダメだという…。  こっそり母に瑠維が聞くと、そうなんだよと言われて、更に悲しくなった。 「きょうだいなのに、なかよくしたらダメなの?  りおんのコト、だいすきじゃだめなの?」  …と、泣きじゃくった瑠維に、母は穏やかに教えてくれた。 「今は仲がいいのは良いけれど、誰よりも好きだというのはダメなんだよ?  瑠維が璃音を好きでいてくれるのは嬉しいけれど、いつか二人とも離れなきゃいけない日は来る。  瑠維には、璃音を一番好きな相手にはしてあげられないんだ。すまない」と…。  何故許されない事なのか3歳の瑠維には理解できる筈もなく、「いつかちゃんと訳を教えてやるから、そんなに泣くな…」と、悲しそうな顔をした母の様子に、瑠維は何も言えない。  帰宅してからも、訳を聞けないから余計に焦れ焦れした瑠維は、募り続ける璃音への想いを持て余し、心も体も熱を持ち始め、どうしようもなくなった。  くうくうと、気持ち良さそうに眠る璃音。  甘い香りに、頭の中が痺れる。  そんな瑠維に本能が囁いた…。 ―おかあさんも、おとうさんもみてないよ。  いま…りおんを、かんじゃえばいいんだよ…。  やさしくかんで、ペロっとなめれば、りおんはボクのもの―  …と。  瑠維は、本能の赴くまま璃音の首筋に唇をつけ。  はく…っ。  優しく、甘く噛んだ。 「ふ……っ?」  ほんの少し璃音が身じろぎしたが、構わず続けてサワリと舐めた。

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