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瑠維に首筋を甘噛みされた璃音は、ピクンと震え、更に甘い香りを放つ。
その香りに誘われるように、まだ生まれて半年の璃音の唇に、想いの丈をこめて、瑠維はそうっと口づけた。
欲しいのは璃音だけ。
他の誰もいらない。
まだ、物心すらついていない自分に密かな求愛をした瑠維へ、璃音も今まで以上に懐いた。
その意味も判らないままに。
だだ、母も何かを感じ取っていたのだろう。
瑠維に甘噛みされた璃音が龍嗣を噛んだ事や、母が選りすぐった子供達に璃音を噛ませた事は、瑠維にはふせられていたのだから…。
月日が経ち、小学校に上がる頃になると、一族の中から「瑠維を伴侶に欲しい」という話も来るようになっていたが、瑠維は決して首を縦に振らなかった。
『欲しいのは璃音だけ』
ずっと瑠維は璃音だけを想い続け、求愛の首噛みも全て拒み続けたのだった。
璃音との関係が一族の禁忌に触れたとしても、璃音しかいらない。
言葉も成長も遅い小さい弟だけが、瑠維を焦らし、甘い香りで誘った…。
そんな瑠維、10歳の冬…。
焦れに焦れた瑠維は我慢の限界を迎えた。
一時は、璃音に求愛した事で満たされていたのに、素直に懐き、瑠維の後を追ってばかりの弟を、母が時折海外に連れ出すようになり、二ヶ月ほどアメリカに滞在したからだ。
瑠維と璃音の仲の良さを、母なりに心配していたのだろうし、少しずつ見え隠れし始めた璃音の異能を見極めるべく、工科系の大学を聴講させていたのだが…。
璃音と引き剥がされ、肌に触れたりする事も出来ないまま、二ヶ月もの間お預けを喰らって焦れに焦れ、瑠維は理性がパンクしかけた。
母と璃音が帰国し、両親も璃音も完全に寝静まった深夜…璃音のベッドに、瑠維は潜り込んだ。
くうくうと無防備に眠る璃音。
可愛い唇に軽く口づけると、深く寝入った璃音がピクンと震えた。
「ん…」
いつものように抱きしめて、心が満たされれば自分のベッドに戻るつもりだったのだが、その夜は違ってしまった。
冴々とした月明かりの中、柔らかな唇の間に覗く薄い璃音の舌が、瑠維の視線を搦め捕る。
堪らず瑠維は噛み付くように唇を重ね、璃音の舌に自分の舌を絡ませた。
どこまでも甘く、蕩けそうな感触の璃音の唇と舌が、瑠維の精神の箍を、完全に灼き切ってしまった…。
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