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「瑠維、お待たせっ!!」
幼いままの璃音が、キュウッと瑠維に抱きついてきた。
ランドセルが大きすぎて背負えない璃音の背中で、体のサイズに合わせたリュックが揺れる。
「これね、あげる。」
研究室で作った模型を瑠維に渡す璃音。
「え?俺にくれんの?」
「うん!!」
ニコニコ上機嫌で歩き出す。
「あのね、これね、水の上を歩くんだよ。
それでね、切り替えすると、水の中泳ぐんだよ」
「え?機械なのに?」
「うん!!」
にこぉっと笑うと、日だまりに咲く花を見たように瑠維の心が穏やかになる。
「お前、こんなの作れんの?
凄いな、俺、ビックリしちゃったぞ」
「瑠維をね、ビックリさせたくて頑張ったんだぁ…。
だって、瑠維のこと、いつも待たせちゃってるし、僕が歩くの遅いから時間がかかっちゃうでしょ?
だから、いつもありがとうのプレゼント…」
青い色の可愛らしい蟹はカタカタと瑠維の腕を攀じ登り、頭の上に掴まった。
「そんなの、俺が兄ちゃんだから当たり前だろ?
別に、俺が勝手に待ってるっていうか…その…、気にしなくていいからさ…。
なんて言うか、気を遣わなくていいからな?
あ、でもさ、プレゼント嬉しい。
あ………ありがとな…」
照れ隠ししながらぽつりぽつりと喋ると、璃音がニコニコしながら振り向いた。
「あのね、もういっこあるんだよ~?」
「もう一個?」
「うん!!」
断熱シートを使った手提げの中の、銀色の金属のケースを数個見せる。
「これね、ゼミの総一さんとか、まりあさんと作ったの。
すんごく美味しいから、早く帰って食べようね?」
「…食べる…?食い物なのか?」
「うん。瑠維の誕生日だから、特別だよって作らせてくれたの。
僕、上手にできなくて、少しだけ手伝ってもらったけど、その…、頑張ってみたんだぁ…」
頬を染めて笑う顔が、瑠維の心を揺らめかせる。
『そんな顔されたら、心臓がどうにかなっちゃうだろ?
俺…、ホントにお前が好きで好きでしょうがないのにさ…』
暖かい気持ちと、切ない気持ちがないまぜになった複雑な気持ちのまま、瑠維は璃音と手を繋いだ。
璃音が頑張って作ったものを早く一緒に食べたくて、少し足を早める。
璃音の足が疲れないよう、何度かペースを緩めながらも、手を繋ぎ、並んで歩いた。
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