145 / 454
・
夕飯の後、璃音が作ったアイスクリームを皆で食べ比べた。
それぞれが美味しく、瑠維が一番好きな味のものばかりだったので、喜んで貰えたのが璃音は嬉しかった。
心を込めて一生懸命作ったから、両親も瑠維も舌鼓を打ってくれた事が何より嬉しく、璃音はニッコリと笑った。
「すごく美味しかった。
今度は兄ちゃんと作ろうな?」
後片付けをしながら瑠維が言うと、璃音ははにかみながら頷いた。
「イチゴのも作っていい?」
「ん」
「ブルーベリーのも?」
「いいよ
璃音はベリー系の味が好きだもんな。
そうだ、作り方のメモくれよ。
今度璃音が熱出したら、アイス作ってやるし。」
「ホント?絶対だよ?
甘甘大王をフォークで潰したのに、ラメールの味のバニラのっけてね?」
「ああ、絶対作ってやっからな?」
「やったぁ」
瑠維の言葉に璃音が満面の笑みになっていく。
実際、璃音の希望は程なく叶った。
一週間後に高熱を上げて倒れ、瑠維お手製のアイスクリームを食べさせて貰ったのだから。
勿論、甘甘大王も添えられていたのは、言うまでもない…。
「おいしい…」
高熱にうかされて、真っ赤な顔でアイスクリームを口に含んだ璃音は、蕩けそうな顔になった。
「瑠維のアイスクリームは、優しい味がするね…」
食欲が落ちていても、瑠維の作ったアイスと、一部のフルーツだけは受け付ける璃音。
雛鳥のように口を開けて待っている璃音は、瑠維にとってこの上なく可愛かった。
「もう少したべるう…」
「冷たい物ばっかりだと、お腹痛くなるだろ?」
「おねがい、もう一口だけ…」
「しょうがないなあ…」
困った顔をしながらも、内心はまんざらでもない瑠維。
自分の作った物だけを喜んで食べてくれる弟が、可愛くない訳がない。
高熱を上げる度、瑠維が作ったアイスクリームを食べた璃音。
瑠維も、弟の口に合うように、バニラ味のものだけではなく、ベリー系のものやキャラメルを練り込んだ物を作るようになった。
時折、幼い璃音に瑠維が焦れ、焦れた瑠維を恐れた璃音が夢遊病を起こす以外は、平和に過ごせていたのだ。
瑠維が倒れて入院するまでは…。
ともだちにシェアしよう!