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◇◆◇◆◇  ダイニングで弓削が煎れてくれたエスプレッソを飲みながら、瑠維は一息ついた。  璃音の好きな例のアレを作り終え、後は仕上がりを待つばかりなのだが…。  一向に起きて来ない璃音と龍嗣。 『まさかとは思うけど、朝っぱらからサカってねーだろーな…』  瑠維のヒクつく頬を、弓削がしっかり見ている。  弓削は龍嗣が璃音にがっついているのを知っていたので、敢えて黙っていた。  瑠維、弓削、猫がそれぞれ喋りにくい状態の所へ、龍嗣が璃音を連れて入ってきた。  勿論、がっついたままではなく、朝風呂でスッキリした状態で。 「おはようございます、璃音様」  キッチンから弓削が声をかけると、璃音が龍嗣の腕から降りた。 「おはよう、弓削さん」  少しよろけながらダイニングを横切り、瑠維の向かいに座る。 「おはよ、瑠維」 「お、おう」  昨日の朝の艶っぽさや、昨夜の寝ぼけて幼い璃音とも違う穏やかな顔を見て、瑠維は少しドギマギした。  妙な違和感を感じながら璃音を見ていた瑠維は、ハッとした。  生まれる前から感じていた、璃音の甘い香りが消えている。 「なぁに?」  不思議そうに笑う顔も、子供子供したものの中に、純真さや無邪気さに混じって何かがある。  それが何なのかは瑠維にも見当がつかないのだが、璃音の中に何かがあった…。 「あの、そのさ、メシ食えそう?  俺、マリアージュの作っといたけど…」 「瑠維のアイス食べたいな…。  何のフレーバーがあるの?」 「バ、バニラとストロベリー・チーズケーキと、キャラメルリボンだな…」  瑠維の言葉に、璃音の表情が変わった。 「全部僕の好きなフレーバーばっかりだね…。  ありがとう、瑠維」  ニコッと笑う顔に、心臓が鷲掴みされたような気がする。 『な、何だよ…、母さんそっくりな顔で笑ってさ…。  いきなりっつーか、コロコロ表情の具合が違うと、対応のしようがねーだろーが…』  下を向いて、ジーンズの腿の辺りを摘んだり捻ったりする瑠維。  別の意味で焦れ焦れしている瑠維の姿に、弓削が吹き出しそうになって、キッチンに引っ込んだ。 『何だかんだ言ってても、璃音様の変わり様にドギマギするあたり、まだまだ純情ですねぇ』  密かにクスクス笑いながら、瑠維が持参した苺やブルーベリーを皿に盛った。

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